塔の上のカバンツェル

静かなる叫びの塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.9
モントリーオール理工科大銃乱射事件を扱ったモノクロ映画。

「エレファント」、「ウトヤ島、7月22日」などを観た後の暗い気持ちになった

14人の女性ばかりを殺害した、実際のカナダの銃乱射事件を描くわけで、
モントリーオールがケベック州にあるので全編フランス語。

映画はほぼ三部構成と言える。
一幕目は、銃乱射に至る犯人像と、登場人物たちのそれぞれのその日、そして銃乱射事件の発生、2幕目は負い目を感じる男性、3幕目は生き残った女性。

特に殺戮の場面は、「エレファント」や「ウトヤ島」に近い、突然巻き込まれる何も知らない彼等と、淡々と女性を手にかける犯人という無常な構図。

ヴィルヌーヴ監督の初期作品ながら、モノクロの静寂な画面造りと、時に俯瞰した見放した構図と、人物たちの生活感が伝わるUPの図の交差は、この時から監督の色が出てるなーという。

犯人が「女だけはここに残れ」と告げるシーンの緊張感や、
自分の失敗と不遇をフェミニズムと女性にこじつけた身勝手さ、
自分の主張は叫ぶのに相手が反論しようとすると遮って撃ち殺す。

この怒りと無条理をぶつけてくるヴィルヌーヴらしさと、実際の事件が持つ絶望とが相まって精神力が持ってかれる。

実際に事件後に自殺を図った人もいたわけで、
その中で生き残った人間の、それでも私たちは勇気を、もしくは愛を、というメッセージはいくばかの救いを見た気がする。

「エレファント」、「ウトヤ島」のひたすら絶望しか残らない線ではなかった。

天と地が逆さまになった、天井を這うカメラワークは、画造りにメッセージを込める映画作りというヴィルヌーヴの片鱗も見れた