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静かなる叫びのvinyliteのネタバレレビュー・内容・結末

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ラストの「男の子が生まれたなら愛を教え、女の子なら世界に羽ばたけと教えます。」という男性と女性どちらへの救済になっているのが、辛いけど良かった。もし男性と女性の対立構造にして敵視させるような負のスパイラルを助長させるエンドだったら、この事件から別の事件になるだけで前に進んでいかないように感じてしまったかも。

インターン面接時の服装や会話内容だったり、女性軽視および蔑視の世の中を耐える女性の姿が描かれており、犯人も女性の社会進出を推進するフェミニズムに対して憎悪を抱いているところは、まさに忌むべき対立構造。事件に気づかずにビールを飲んでいる男性たちという、現状の社会構造にすら気づいていないことのメタファー。
しかし、見ていてポイントに感じたのは、コピー機を譲ってあげたり、助けようと動き回った優しそうな男性が最後の自殺するというところだと思う。
これをどう捉えるのかは、それぞれだろう。個人的には、PTSD等の表現がなく、卒業後仕事につけず、クリスマス等の予定もなく、妻や彼女がいないように描かれて自殺することから、これもまた犯人と同様に男性社会での弱者の姿であると感じた。(両人とも、ベットシーツを直して決意を固めるシーンなどその対比を狙っていると思う。)

長々と書いてしまったが、こういった内容は、大局的にみると社会全体の話であり、特定の個人や性別に落とし込むと、ミソジニーやミサンドリーなど敵視の上での対立構造に近くなってしまう。この事件を描く中で、偏らず、敵対させずに、男性側に温情をかけて作っているのは、素晴らしかった。
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