やっと観れたヴィルヌーヴ初期の作品。
もうこの頃から今現在の才能の片鱗を充分
予見させる完成度。
彼の作品は、始まった瞬間からグイっと
物語に引き込まれる。なんだろ?緊張感と言うのか何か張り詰めたものが早々に漂っている。
実話の悲劇を元にしているというのを、差っ引いても本作も例外ではなかった。
ちょっとコントラストがキツめの全編モノクロ映像。実話なので避けることの出来ない殺戮シーンを緩和する意図もあっただろうが、それ以上の映像的な効果も大きい。
初期作品という事で、独特のカメラの動きなど、ちょっととんがった演出も見られる。ただ、音や音楽の使い方は今現在と同じく通づるものがある。
本作は題材的に悲劇過ぎて、どうしてもストーリーには中々、感情移入しにくい。その為、現実逃避のようにヴィルヌーヴの演出に目がいってしまった。
今も度々起こる理不尽極まりない大量無差別殺戮。理解する事など出来ない犯人に感情移入させないよう、犯人だけは淡々と突き放した描写に徹しているように思えた。
その分、生き残って心身ともに傷を負い、事件後に世界が一変してしまった男女。
この2人の喪失感と恐怖が余計に浮き彫りにされ、いたたまれなくなる。
最近、サイエンスフィクションものが続いてる(デューンは進んでるのか?)ヴィルヌーヴだが、彼の力量を見せつけるのは社会の闇を表現するこういった作品かもしれない。
けど、噂に出ている007は是非、引き受けて頂きたい。