ベルサイユ製麺

静かなる叫びのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.6
ドゥニ・ヴィルヌーヴ初期作。
カナダ、モントリオールの大学で実際に起こった銃乱射事件に着想を得た作品です。
銃撃犯の青年、被害に遭う生徒達などの視点を時間軸をシャッフルして描く…と聞くとG・V・サント監督『エレファント』を思い浮かべる方も多いと思いますが、実際近い構造の映画では有ると思います。ただ、後味は今作の方がずっと苦い。
実際の事件については何かの書物で読んだ気がする程度だったのですが、改めて知ると非常に強いショックを受けます。完全に、所謂ヘイトクライムなのですよね。しかもヘイトの対象が大き過ぎる…。レンジの大小の問題では有りませんが、そもそもヘイトをする人はどうやって自己の正当性を信じているのでしょう。いつ、如何なるタイミングで、例えば日本人だからとか未婚だからとか、訳の分からない理由でターゲットにされるとも知れないのに。彼等はどんな世界を望んでいるのだ…。
モノクロの映像はドキュメント的にリアリティが増しますし、個人的な思い込みですが、銃撃犯の渇ききった心情の表現にも有効だと感じました。悪魔の身体から流れでた黒いモノと、犠牲者のモノが混じりそうになる瞬間。単なる嫌悪感とは言えない様な酷い感情が走り、体の節々が痛みました。
ショットの的確さ、編集のタイミング。恰も熟練の監督の様です。尺の短さの割に安っぽくも見えず完成度はとても高いです…。かと言って、この監督が後に『ブレードランナー』の後日談や『砂の惑星』のリブートを手掛けるなんて、ちょっと信じられないですね。若手監督の作品、もっと観なきゃ駄目だなぁ。

全く別の話ですが、レンタルで観た『エレファント』に大変な衝撃を受け、直ぐにDVDを買おうとショップに走ったのですが、DVDの帯に浜崎あゆみさんのコメントが大きく載っていたのを認め購入を見送った事を思い出しました。ヘイトの種は思わぬところに潜むのです…。