けーはち

ウォーム・ボディーズのけーはちのレビュー・感想・評価

ウォーム・ボディーズ(2013年製作の映画)
3.7
ゾンビ青年が、生身の女子に恋をしちゃった⁉──ゾンビものでも誰もが観やすいタッチの恋愛ドラマにし、100分以内でまとめるB級娯楽デートムービーのお手本的な小品。

主人公(ゾンビ)=「R」、ヒロイン=「ジュリー」なので、「ロミオとジュリエット」が下敷き。謎のウイルスによりゾンビが蔓延、人類が壁を築き身を護る『進撃の巨人』めいたポスト・アポカリプス世界で彼らは敵同士、そればかりか生者と死者、人とゾンビとの、正しく「禁断の恋」だ。

そんな彼らがどうして歩み寄って恋をするのか。まず、本作のゾンビは「食った人間の脳から記憶を得られる」という設定があり、これによりジュリーの元カレを食ったRが彼女を匿い、恋で心臓がドキドキ動くと生者に近い状態になるという御都合、そして人間&ゾンビの対立以外に白骨化したモンスター(ボーンズ)という対話不可能な連中が出てくるのでコイツらに対して人間&ゾンビが共同戦線を張ることでかつての敵同士に絆が生じるという超分かりやすい御都合の力技で押し込んでくるのであった。

それら諸々を了解した上で、ゾンビ青年がうまく働かない脳でじわじわヒロインに対話を試み、言語中枢をポップ・ミュージックの助けなどで補いながら、「彼女を守る」という意志を伝える様子は、微笑ましいし、ぎこちないゾンビ演技から徐々に人間らしさを取り戻していく様子もなかなかよくできている。ゾンビ顔をメイクでごまかして生きた人間らしくする、という展開もコミカルで良い。

主人公ゾンビ青年Rはニコラス・ホルト。後にMMFRでニュークスを演じた。あれも白塗りのゾンビみたいなメイクであった。結構な美形なのだが、素顔で出演した作品がヒットする経験にはなかなか恵まれないのだろうか。