ねっしー

ファンタジア2000のねっしーのレビュー・感想・評価

ファンタジア2000(1999年製作の映画)
4.3
1941年公開の『ファンタジア』の正式な続編。
公開される度に短編の内容が変わる、「音楽コンサートのような映画」というコンセプトがそのままなので、『ファンタジア』という同じタイトルでも良かったのかもしれません。
今作は前作に比べると、より物語的な作品が増えています。また、画面サイズの拡大を意識した構図が多様されているのも特徴です。音楽の素養がない私にはその方が分かりやすくて良いです笑
でも、普通の解釈とは違う作品ばかりだから、音楽の知識があると逆に楽しめないのかも…?

いずれにしろ、約60年越しにディズニー家の悲願が成就した今作は、すべての作品のクオリティが高く、わくわくしっぱなしの「音楽コンサートのような映画」になっています!

◆ベートーヴェン『交響曲第5番』
音楽をそのままアニメーションにしたタイプの作品です。
折り紙のような蝶が舞い、善と悪が争うような描写です。
初代『ファンタジア』を思い出させる幕開け!
スマホの画面では面白さがわからなそうです。映画館で観てみたい…

◆レスピーギ「交響詩『ローマの松』」
もともと映画のスコアだったかのような曲調で驚きました。
内容はローマにも松にも関係なく、空と海を自由に泳ぐ鯨たちの物語です。
月明かりの夜に鯨が浮かぶ、神秘的な世界観は割と好きです。
ただ、見せ場の鯨の群れは、溜めを作ってから、一気にグワーっと自然の雄大さを見せるように海から出てくるシークエンスにしてほしかったです。
子供鯨と同じ見方をしたかった。

◆ガーシュイン『ラプソティー・イン・ブルー』
この曲を聴くと、どうしても『のだめカンタービレ』を思い浮かべてしまいます笑
シンプルな単線と青みが強いべた塗りのみでNYの人々の悲哀を描く。
今作オリジナルのストーリーはあまり面白くないけど、音楽と見事に噛み合っていて凄いです!
あとお稽古失敗ガールがかわいい!

◆ショスタコーヴィチ『ピアノ協奏曲第二番アレグロ』
アンデルセンの『すずの兵隊』のアニメーション。3DCGと手描きが合わさったこの時期ならではの作風です。
同年公開の『トイストーリー2』と比べると、同じおもちゃが動くCGでもこちらは、まだシェイディングの途中くらいのレベルに見えます笑 やっぱりPIXARは段違いのクリエイティブ力がありましたね。
物語は見るからに悪役で傲慢なピエロのびっくり箱がバレリーナ人形を自分のモノにしようとするも、すずの兵隊が阻止して結ばれるという内容。(雑なまとめ笑)

◆サン=サーンス「動物たちの謝肉祭」より『終曲』
フラミンゴにヨーヨーを与えたらどうなるか?
面白い!笑 スピーディーな作品です!

◆デュカス『魔法使いの弟子』
ここでまさかの『魔法使いの弟子』!!
映画館で観たら、おおーってざわめきが起きそう笑
物語が上映する度に入れ替えられるというコンセプトを、まさに体現していますね。前回の人気項目が入るのは音楽コンサートでよくある事ですから。

◆エルガー『威風堂々』
『威風堂々』に乗せて『ノアの方舟』を描く。主役はドナルド!
ノアに命じられて動物の番を方舟に載せていくドナルド。しかし、最後に残ったデイジーが船に乗り遅れて津波に飲まれてしまったと勘違いする。そして、デイジーも全く同じ勘違いをしているという物語。全部ゾウのせいだ笑
ニアミスもあったり、ディズニーなのにアンジャッシュの世界を感じざるを得ません笑
絵も綺麗で、繋ぎのミッキーのメタ演技ともリンクしていて好きですね!

◆ストラヴィンスキー『火の鳥』
すごくジブリを感じる動きやアングルやシークエンスでした。
溶岩から逃れようと走り、木を登り、高台から圧倒的な自然の驚異を見る。ある意味アニメーションだからできる、空間性の高い映像に気持ちが昂ぶります!
この作品も一話目同様、大画面だからこその作品になっていますね。全体的に細い線画と繊細で大胆な色の塗り方が、迫力を持って訴えかけてくれそうです。
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