愛

言の葉の庭の愛のレビュー・感想・評価

言の葉の庭(2013年製作の映画)
3.5
翠雨、酒涙雨、天泣、秋霖……季節と面持ちにより繊細に表現し使い分けてきた雨にまつわる美しい日本語。これらは現代に詠い紡がれ、私たちはまた同じはずの空を見上げ反芻する。どの雨にも各々の想いを馳せる匂いや描く色彩があり、微妙な湿度の違いを肌で感じ分ける。日本に生まれて、それだけで人生が豊かだ。

この映像と音から蘇るのは、今日こそは朝から学校に行こうかどうかと迷ったまま、飯田橋ラムラのアーケードに置かれたベンチで時間が過ぎるのをただ待っていた学生時代。誰も怪我せず学校だけ爆破しないかなって毎日本気で思ってた。
コージーコーナー(今はもう無いらしい)を横目に地下鉄に潜るエスカレーターも、その先で待っている皮脂まみれの鉄が擦れる鳴動も、ホームルームが始まる前の雑談と馴れ合いも上っ面の「おはよ〜」も、朝のすべてが嫌いだった。でもそれ以上に、皆と同じことができないことを他責にする自分のことが一番大嫌いだった。惨めで痛々しかった。

それでも雨の日だけは「別に良いじゃん」って言われているような気がして。そう思えて。根拠のない諦念を抱き、穏やかな気持ちで雨音に応えていた。なんて、ただのサボり魔なんだけど。

絶妙なタイミングで挿される秦基博さんのRainが最高に優しく心地良い。オリジナルの大江千里さんのRainが子供の頃から好きだったけど、この瑞々しい映像にシンクロするカバーも素敵。入梅に観たい。

メモ:https://youtu.be/F6VwY1tGeAk?si=hqR6CqHhPdsxcUbO
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