そうね、ひとつの恋のはじまりはきっとこんな風。
はじめは自分ひとりが語っているような一方的な一人称の世界。自分と、自分から見た彼女。ふたりの世界となって、ようやく世界は反転して“あなた”の世界、彼女の世界が語られる。でもね、世界はもっと広いの、彼女の置かれた世界が広がって自分のところまで届く。そしてよりハッキリする世界と自分と彼女。そしたら世間がほっとかないよね、自分の気持ちだけで突っ走ってたらそれで良かった世界は終わって、立場や肩書き世間体が幅を利かせてくる。だから気持ちとは裏腹にふたりは、すれ違う。
そういうお話をぎゅっとまとめて、とても美しい雨の描写と音楽に呼応する画で見事に描き切っている。
ストーリーもキャラクターも申し分無くて、じゃあこれをアニメで描く利点って何だろうって逆に考えさせられる。
それは、多分フォーカスの自由度。描きたい角度から描けること、なのかな。鳥のように眺めたり、雨を降らせたり、響かせたい音にだけ集中させたり、っていう。
現代の東京で男の子で高校生だったなら、確かにこんな現実を生きていたのかもしれない、なんていう美しい疑似体験の旅をさせてもらった。見ることが出来て良かった作品でした。