じょの

オン・ザ・ロードのじょののレビュー・感想・評価

オン・ザ・ロード(2012年製作の映画)
2.5
原作はジャック・ケルアックのベストセラー。私と同世代か、もうちょっと上の人は、たぶん読んだことあるでしょう。
10代で一度読み、20代でまた読みましたが、当時の感想は「どこが面白いのかな?」
しかしこの映画はとても面白く、上映時間が二時間半くらいあって長いのですが、めずらしく飽きませんでした。

映画館を出て、同行者にまっさきに言ったのは→「こんな話だったっけ…?」
記憶にない場面がいくつもあり「こんな……だっけ?」と混乱しました。
「こんなだよ」と同行者が言うので「こんなホモっぽかったっけ?」と念を押したくらい。

私が読んだのは旧訳の『路上』であって、新訳の『オン・ザ・ロード』を読むことで、この混乱から抜け出すことができるのかも。
(『オン・ザ・ロード』の訳者は青山南さん。日本版エスクァイアの元編集さんで、彼の翻訳はとてもかっこいいんですよ)

本作は50年代を舞台としているので、映画にはタバコを吸うシーンがさりげに挿入されています。
そのため上映中、もうれつに煙が吸いたくなり、禁煙の誓いを破りそうになったので、ガムの包み紙を巻いて吸いました。メンソール煙草みたいな味がしましたよ。本当はメンソールは嫌いなのですが、贅沢は言ってられません。おかげで禁煙を守り通すことができました。
煙草だけでなくオクスリも出てきますが、こっちは『もうれつにヤクが吸いたくなり』……とはならず、平静な気持ちで眺めるのみ。
当時は薬局でも手に入ったらしい“ベンゼドリン”というドラッグが登場。これがビート世代にはブームだったようです。
前に観た『BEAT(邦題:バロウズの妻)』にも同薬が出て来て「聞いたことねぇなあ…」と思っていたら、“ベンゼドリン”は、今でいう“アンフェタミン”のことでした。

それにしても、何で今頃『オン・ザ・ロード』なんでしょうね?
何度か映画化の話があったようだけど、その都度ポシャっていたらしいので、単にタイミングの問題なのでしょうか。
この作風だと「いつやるの!?今じゃないでしょ!」という感じは否めません。80年末か90年代初頭に上映したら、もっと注目されたのではなかろうかと感じます。

おかげでディーンを観ても「かっこいい!」とは思わず、「おまえもいつか50になるんだぞ。気をつけろよ」としか思いませんでした。これは私が老いただけなのかもですが……。
でもサルとディーンが一緒にいるのを見るのは楽しかったです。
『ウィズネイルと僕』という映画が思い浮かびました。主人公二人の距離感が似てるので。
あと、ネタバレになるので言えないけど、スティーブ・ブシェミには驚かされましたね。まあ、いつも彼には驚かされているのだけど。

『オン・ザ・ロード』は景色がすごく奇麗な映画で、一緒に旅をしている気分になりました。
2012年の夏、あまり遠出しなかった私のようなモヤシ野郎には、ぴったりの作品。
去る夏を惜しむように、ジト目で見れるロードムービーでした。
じょの

じょの