タケオ

小さな悪の華のタケオのレビュー・感想・評価

小さな悪の華(1970年製作の映画)
4.4
 少女たちの錯乱し、混濁した、どこまでもねじくれた精神を描いたという意味において、本作はどこまでも真っ当な「青春映画」である。
 サタンに忠誠を誓った2人の少女たちは次々と悪事に手を染めていくが、彼女たちは決して邪悪な存在ではない。その全ては、思春期ならではの純粋な好奇心と直結している。「知らない世界を知りたい」という感情は、多感な時期を迎えた子供たちにとっては至極当然のものだ。本作の主人公たちのように、キリスト教という閉鎖的な環境で育てられたというのであれば尚更だ。少女たちの悪事は次第にエスカレートし、遂には倫理のラインすらも超越していくが、もはや2人が罪の意識すら感じていないのが恐ろしい。本作を、「知らない世界を知りたい」という当たり前の感情を「悪しきもの」として断罪するキリスト教の排他的な価値観が招いた悲劇としてみることもできるだろう。
 少女たちが作中で体現しているもの、それは「自由」だ。自覚があるかどうかは定かではないが、2人は'それ自体が確固たるものである'として憚からないシステムに対して挑み続ける。自分たちは「神」にも「秩序」にも縛られることのない、どこまでも自由な「人間」である、と。本作の結末は極めてショッキングなものとなっているが、2人にとっては決して悲劇的なものではない。どこまでも無邪気で、それでいて残酷な「自由意志」の勝利なのだ。大人に、神に、世界に挑戦した2人の青春は、どこまでも美しく煌めいている。
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