イチロヲ

小さな悪の華のイチロヲのレビュー・感想・評価

小さな悪の華(1970年製作の映画)
4.0
寄宿学校に通うふたりの少女が、大人が提示する宗教的観念に抗い、無自覚的な反社会的行為へと没入していく。ニュージーランドで実際に起きた事件をベースにしている、サスペンス・ドラマ。ピーター・ジャクソン監督「乙女の祈り」と同一の題材。

1971年度のカンヌ映画祭に出品されたものの、一般公開が禁止になった問題作。「無垢だからこその残酷性」を中心にしながら、信仰心の在り方を提起していくスタイルになっており、ドラマの根底部分は哲学の領域に達している。

ふたりの少女に共通するのは、ボードレールやロートレアモンといった、タブーに触れて危険人物とみなされた芸術家を溺愛している点。それから、宗教の教えが絶対的であり、頭がガチガチになっている大人に対して、無自覚な抵抗をおこなっている点。

人間は「自由」から自分なりの生き方を選択しながら日常を送っている。だが、信仰心が選択肢に干渉すると、自由が失われてしまう。「自由があるからこその反社会的行為じゃないの?」というメッセージ性が、鑑賞者の生理を刺激してくる。
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