毒々しい女郎蜘蛛の刺青のクオリティが高くてとても美しい。若尾文子の肉付きの良い背中と腰のラインの柔らかさと女郎蜘蛛の物々しさのコントラストが印象的。
蜘蛛を彫ってからみるみると悪魔度が増して行く若尾文子とそれに惑わされ騙され魂を吸い取られて行く周りの男達、まさしく冒頭の絵画で暗示された通りだった。
しんさんの狂い様が凄まじく、最後は愛情と憎悪の臨界状態の如き感情に呑み込まれて思いもよらぬ行動をとっていた。
山本學演じる彫り師の存在は、時に背筋が冷ややかになる様な気持ちの悪いものであった。
彼のラストの厭な台詞と行動は素晴らしく、死体が三つ並んだ状態で静かに時間が経つ所は特に良い。
増村保造監督は本当に女性の性的な魅力を映し出すのが上手い…。卑しさが全開のシーンですら女性が美しく映されている。若尾文子の美を完璧に把握し、シーンに応じてそのボキャの中から引用している感覚。