風の旅人

ドリーマーズの風の旅人のレビュー・感想・評価

ドリーマーズ(2003年製作の映画)
3.5
1968年、パリ五月革命の前夜、アメリカ人留学生のマシュー(マイケル・ピット)は、謎めいた一卵性双生児イザベル(エヴァ・グリーン)とテオ(ルイ・ガレル)に出逢う(二人の腕には同じ形のアザがある)。
二人の家に泊まったマシューは、夜中に目覚め、イザベルとマシューが寝床を共にしているところを目撃する。
外の世界の喧騒をよそに、二人だけの世界に閉じこもるイザベルとテオ。
シネフィル(映画狂)である二人は、映画のワン・シーンを再現し、何の映画か答えられなかったら罰ゲームという遊びに興じる。
罰ゲームの内容は性的なもので、マシューは二人に感化され、しだいに自堕落で退廃的な生活を送るようになる。
「人は愛を求めるけど、愛なんて存在しないわ。愛の証拠だけよ」というイザベルを、マシューはデートに連れ出す。
しかしイザベルはテオと離れたことで半狂乱になり、やがてテオとのプラトニックな関係へと戻っていく(肉体関係はないことが示唆される)。

インモラルな世界を覗き見る悦び。
エヴァ・グリーンが妖艶な魅力を放ち、裸体の美しさに見惚れてしまった。
映画を観ることは、現実を一時忘れ、夢を見るようなものだ。
しかし夢はいつか覚める(窓ガラスを割られるように)。
映画を観終わった我々は、現実に立ち返る。
ようやく外に出た二人が、マシューと袂を分かつラスト・シークエンスに、そのことを思い知らされた。
夢の時間は終わり、現実が始まる。
風の旅人

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