Vega

紅いコーリャンのVegaのレビュー・感想・評価

紅いコーリャン(1987年製作の映画)
4.9
原作は莫言。マジックリアリズムの作風は本作にも感じ取れる。
冒頭、赤い輿が大地に揺れる花嫁道中は幻想的で緑のコーリャン畑に現れる覆面の追い剥ぎはどこか神話的でもある。
肉屋のサンパオの登場はマカロニウエスタン。「好酒、好酒」の掛け声のような伝承音楽のような土着的な歌声にも高揚する。
そして恋におちる二人、勇しくも艶っぽいコン・リー。

日蝕に象徴されるように、奪われても蘇り生きる者のものがたりだと思った。
一頭のラバと引き換えの嫁入りで男らに輿を揺され泣いていた娘が、造り酒屋の女将として男衆を束ね、やがて日本軍へのゲリラ戦を謀るに至る。
人々もコーリャン畑も踏みにじられて消えて、それでも再び這い上がろうとする赤い大地とこどもの歌声に、生きることの悲しみと力強さの余韻が残る。



若いとき、恩師からこの映画を勧められ見逃し、ずっと気になっていた。今や感想を語り合うことはもうできない。
私もこの映画が好きだと、それだけでも伝えられたらいいのに。
Vega

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