「何年後、何十年後、日本はどんな国になっているんでしょう」
時は現代。
司法浪人生の佐伯健太郎(三浦春馬)とその姉・慶子(吹石一恵)。
祖母の葬儀の席で実の祖父の存在を知ることとなる。
零戦パイロットとして特攻死した祖父・宮部久蔵。
祖父のことが気に掛かり、かつての戦友たちを訪ねて話しを聞くが、みな口を揃えて“海軍一の臆病者”と言う。
天才的な操縦技術を持ちながら“海軍一の臆病者”と言われた宮部。
だが調べを進めるうちに、健太郎は真実を知ることとなる。
そして時代は、昭和16年…
思ってた以上に宮部久蔵を演じた岡田准一が良かった。
と言うか、今まで彼の出演作は劇場版の『SP』しか観たことがないのですが、ドラマありきの作品だったため観てない私はチンプンカンプンで、全く入り込めなかったので彼の演技も印象に残ってないのですが…
ハッキリ言って岡田准一を見直しました。
零戦を操縦する鬼気迫る表情と普段の優しげな表情のギャップが素晴らしい。
怪我をした大石(染谷将太)を見舞った際に、「そんな日が来るといいですね」と言った時の優しい表情が特に印象的であった。
作品としては、宮部久蔵に関わった人たちの話しで、徐々に宮部という人間が明らかになっていく展開が話に惹き込まれる。
そして零戦や戦艦、空中戦、爆撃などの映像も十分な出来で違和感がなかったのも物語に惹き込まれた要因である。
生きたいと願った宮部。
そして未来ある若者の死を誰よりも悲しんだ宮部。
この作品について、特攻隊を美化した物語と誹議する人が多勢いるらしい…
だが私はそうは思わなかった。
誰しもが心の底では生きたいと思っていた。
愛する家族、妻、子供、親、兄弟、恋人、友人にまた会いたいと思っていた。
平和な時代を願っていた。
そして、死ぬことを怖いと思っていた…。
目を覆いたくなるような残酷な戦争描写はないが、十分に戦争の悲惨さを描いていたと思う。
「あの時代、一人ひとりにそんな物語があった。みんなそれぞれ胸に秘めて、何事もなかったように生きているんだ。それが、戦争で生き残ったということなんだ」
胸に刺さります…。
ただ現代のパートでオーバーな演出が多々見られたのは逆に興醒めしてしまうので不要だったかな。
橋爪功の病室で皆で空見上げるシーン、影浦(ヤクザ)が「宮部を守る」と言うときのアップ連発、ラストの歩道橋のくだりなど、過剰演出でチョット興醒めでした。
あと現代パートの三浦春馬と吹石一恵がチョット軽い演技で、胸に響かなかったの残念。
それでも現代パートでは、ベテラン俳優たちの素晴らしい演技もありましたし、全体的には素晴らしい作品だったと思います。
冒頭に書いた宮部と大石の会話。
彼らが望んだ日本に、そして世界になっているのでしょうか?
今この時代だからこそ観て感じて欲しい作品だと思います。
おまけ
⚠ネタバレ注意です⚠
宮部が戦闘機の整備にこだわっていた伏線が、大石との戦闘機交換で回収していたのはお見事。
そしてラストの宮部の笑顔。
特攻で敵を殺せる喜びで、好戦的な映画であると言う意見も聞きます。
だがそうでしょうか?
私は違うと思いました。
かつて自分の命を助けてくれた大石を守れたこと。
宮部が最も恐れていた“妻と娘の人生が壊れること”を大石に託すことで二人を守れたこと。
妻・松乃に死んでもまた戻ってくると言っていたが、これでやっと魂となって松乃の元に還ることができること。
様々な想いがラストの微笑みになったと思います。