カツマ

ファイナル・デスティネーションのカツマのレビュー・感想・評価

3.9
逃げた先でも死が待っている。それは運命、循環する滅びの予言。悪夢は凄惨に命を救い、そのしっぺ返しとしての死を用意した。次は誰?追ってくるのは死神なのか?どんな時も油断は禁物。ひとたび気を抜けば、爆発と共に散ったクラスメートの手が伸びてくる。それは地獄のような延長戦。いつ終わるともしれぬ恐怖が、定めの時を待っている。

シリーズ化もされている『ファイナル・デスティネーション』、その始まりとなる第一作目が本作である。飛行機事故から生き残った7人が、死の運命に翻弄されるという設定が恐怖を煽り、突発的な死がショック描写を誘発する。監督には『Xファイル』『ミレニアム』の脚本家としても有名なジェームズ・ウォンで、彼の長編映画監督デビュー作でもある。死の運命から逃れる方法は果たしてあるのか?その後のシリーズの先駆けとして、ホラー映画に新たな定番を追加した記念碑的な一本であろう。

〜あらすじ〜

高校生のアレックスは、パリへの修学旅行に胸を弾ませながらも、飛行機事故の恐怖に怯えていた。それは出発直前の生々しい悪夢によって後押しされ、アレックスはついに離陸直前の飛行機から降りることを決意する。それに帯同することになったのは、親友のトッドや、たまたまアレックスにシンパシーを感じていたクレア、アレックスに掴みかかったカーターとその恋人テリーら、7人。彼らはアレックスの奇行に不満と不安を募らせるも、その直後、他の生徒たちを乗せた飛行機は凶悪な音を立てて爆発した。あまりの惨事に呆然とする7人。その後、アレックスは事件を予言したとして、警察からあらぬ疑惑を向けられてしまう。
それから数日が経ち、亡くなった生徒たちへの追悼式が執り行われると、それがスイッチになったかのように7人に死の影が忍び寄る。そしてある夜、アレックスは親友のトッドの死を予感し、彼の家に向かうことにするのだが・・。

〜見どころと感想〜

循環する死神の鎌。それは7人に共通に訪れる『死』という運命で、襲いくるのは実体のない恐怖である。前半部はまだその運命のタイミングが読みやすいのだが、中盤頃からは突然訪れる死の恐怖に戦慄しながら鑑賞することになるだろう。決して油断してはならない。少しでも気を抜いた者は、その一瞬が命取りになってしまう。終わりはすでに決定されていて、そこに向かうまでの道をどう逸らしていくか、という絶望的なバトルが7人を呑み込んでいく。

主演のデヴォン・サワはカナダ出身の俳優で、恐らくこの映画が一番の代表作であろう。その後は伸び悩むも、40代を迎えた今も俳優として活動している。クレア役のアリ・カーターはHEROSやバイオハザードシリーズへの出演が有名。また、この映画ではやや冴えない役柄だったショーン・ウィリアム・スコットは、『アメリカン・パイ』のイメージそのままにコメディ系の作品に数多く出演、現代まで耐えずハリウッドで活躍中だ。

実はキャラクターの名前の一部は往年のホラー映画、またはその監督やキャストから取られており、この映画がホラー映画の伝統的な系譜に位置付けられようとする意思を感じる。アレックス・ブラウニングは『魔人ドラキュラ』から。ビリー・ヒッチコックはもちろんヒッチコックであるし、テリー・チェイニーは『オペラ座の怪人』のロン・チェイニーと、何気に細かい小ネタが効いている。

ホラー映画はやはりセンスとオマージュの実験場。今作もまた監督のホラー映画への憧憬を滲ませつつも、エンターテイメントとしてしっかり怖い。その両立が本作を風化させないシリーズの一作目として燦然と輝かせることになったのでしょう。

〜あとがき〜

かなり久々の鑑賞となりましたが、公開当時のあの得体の知れない怖さが蘇るようでしたね。いつ死ぬか分からない恐怖とショック描写は強烈で、いきなり振り下ろされる断頭台にビクビクしながら観た記憶があります。

ちょうどネトフリにシリーズがあがってきてますので、『デッドコースター』も久々に観ようかな。その先は不評なので迷いどころではありますが、、
カツマ

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