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世紀の光のTTのレビュー・感想・評価

世紀の光(2006年製作の映画)
3.0
美術館向けのインスタレーション映画だった。

本作は普通の映画のような起承転結がない。前半は田舎の病院を舞台に展開する。そして、中盤になって突如、都会の病院が舞台となり、田舎の病院で登場したキャラクターたちがこちらでも出てきて、ほぼ同じ話が反復される。しかも、その反復が全て同じではなく、一部分のものに過ぎない。田舎の病院で描かれる歌手志望の医者と若い僧侶との交流も、都会の病院の場面では全然描かれない。

そんな山場もなければオチもない映画途中で寝てしまうんじゃないかと思うかもしれないが、意外にも最後まで観れてしまうから驚きだ。確かに前半は平板過ぎてウトウトするのだが、後半になってからは、会話の内容がズレやカメラワークの違いなどを自ずと探すようになってしまうのだ。

“反復に潜む違いを楽しむ”。それこそが本作最大の見所であり、作り手たちの目的だったのかもしれない。

ただ、僕自身は、映画というよりビデオアートを観させられているようであんまり感心しなかった。また、差異を楽しむというのは、美術品などを鑑賞する際の見方のひとつでもあるから、その行為自体は目新しくないような気がする。

『リュミエール』を愛読していた蓮實重彦チルドレンみたいな人たちは手を叩いて喜ぶんだろうな、きっと。
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