Inagaquilala

ヒットマンズ・レクイエムのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)
4.0
「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督が2008年に初めて撮った長編作品。脚本も監督自身で、第81回のアカデミー賞で脚本賞にノミネートされた。しかし、それだけのことはある、よくよく考え抜かれた脚本と映像は、観る価値じゅうぶんだ。とくに、「スリー・ビルボード」を観て、この監督および脚本家に興味を持った人間は必見の作品だ。

ロンドンで「仕事」をした殺し屋のふたりが、ボスの指示により、ベルギーの古都ブルージュに飛ぶ。中世の佇まいをいまもそのまま残す町は、ちょうどクリスマスシーズンで、ふたりはやむなく同じ部屋となるが、若い男のほうは、相手の中年男の性癖からどうも居心地が悪い。時計台が名所で、水路が有名なこの町を歩いていて、ある映画のロケに出会う。そこで見かけた女性に声をかけたことから、男はややこしい関係に巻き込まれていく。一方、中年男のほうは、ボスからの非情な指示を受け動揺する。

要するに、ベルギーのブルージュへと逃げた殺し屋ふたりの物語なのだが、さすがにマーティン・マクドナー、いろいろなサブストーリーを交えながら、死に対するさまざまな感情を抱えた人間たちを描いていく。その作劇は巧緻で心憎いばかりだ。「ブルー・ビルボード」にも出演していたピーター・ディンクレイジがその作品でもキーポインとなる役どころを演じている。原題は「In Bruges」、どうして邦題が「ヒットマンズ・レクイエム」というものになるのか、作品内容と考えあわせるとやや芸のないタイトルだ。
Inagaquilala

Inagaquilala