ロサンゼルスのとある邸宅にベビーシッターとしてやってきた女性ジル。
屋敷の主人の外出後、留守を受け持った彼女の下に不審な男からの電話がかかってくる。
「子供たちの様子はどうだ?」
しつこい電話が気になったジルは警察に逆探知を頼むのだが…。
都市伝説をもとにベビーシッターに降りかかる恐怖を描いたサスペンスホラー。
これ、タイトルが『暗闇にベルが鳴る』とそっくりなんで、よくある便乗作品?って思われがちなんですが、これはどちらも同じ都市伝説を基にしてるからなんですね。
アメリカでは10代の少女のアルバイトとしてもベビーシッターが定着しており、現地では身近な怖い話として感じられているようです。
日本ではベビーシッターという職業に馴染みがないので、子供などの要素が削られた形で流布しています。
ベビーシッターの要素が削られて侵入者はストーカーに置き換えられたり、侵入者が自分の携帯番号を電話以外の手段で知らせたりと即物的な恐怖ではなく、じわじわと来る心理的な恐怖を感じられるようにアレンジされているのです。
話は反れましたが、この映画のタイトルは“謎の犯人からしつこく脅迫電話がかかり、主人公が命を狙われる”というプロットが『暗闇にベルが鳴る』と似ているので、配給会社が独自に付けたのだと思われます。
『暗闇にベルが鳴る』の怖さに、『羊たちの沈黙』を足したかのような映画です。
タイトルだけで「また『13日の金曜日』系のスラッシャームービーかぁ…」って思って観たら、正統派のサスペンス映画でした。
想像していたのと違って、全然スラッシャームービーにはなりません。
物語の展開はジョン・カーペンターの『ハロウィン』に似ているかな。
猟奇殺人を犯した犯人が医療刑務所を脱走、猟奇犯罪の再発を阻止しようとする探偵と対決するって話だし。
本作で注目すべきはとくに前半の約20分。
『暗闇にベルが鳴る』のクライマックスをオープニングに持ってきちゃってる感じです。
どこの家庭にでもあるごく普通の電話が、ベビーシッターの女を恐怖のどん底へと叩き落とす小道具として効果的に使用されており、雰囲気抜群でなかなか怖い。
男 :「‥‥はぁはぁ・・・今何色のパンツはいてるの?…うぁぁぁぁぁぁ!!」
とかじゃなく、
男:「‥‥子供たちの様子を確認したか‥‥?」
だもんね。
子供の様子を探りに行くときはドキドキしたし、逆探知の結果が出たとこでは血の気がひきました。
しかしまぁ、はっきり言って前半部分「だけ」がオモシロイ映画というのが、正直なところ。
犯人が出所してからの後半は、捜査ものサスペンスの色合いが強くなります。
とにかく中盤がダルくてちょっと退屈でした。
ラストシーンも唐突であり、何かが欠けているといった印象。
前半のネタだけ活かして、他の脚本を作れば結構面白い作品になるかもしれない。
もう少しで名作の域にまで昇華出来たであろう惜しい作品です。