あーさん

ベニシアさんの四季の庭のあーさんのレビュー・感想・評価

ベニシアさんの四季の庭(2013年製作の映画)
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久しぶりに、観てすぐにレビューを書きたくなった作品。

BSプレミアムのめぼしい映画を録り溜めているフォルダーが、いよいよ一杯になってきた。
観ようと思いながらも、その時の気分にしっくり来る作品って案外少ないもの。。どんどん増える一方!

そんな中で、ふと目に止まったのがこちら。

"猫のしっぽ カエルの手" でもお馴染みの京都の大原在住(元貴族で)イギリス人、ベニシアさんが生活や日々の営みを紹介しながら、自らの半生を振り返るドキュメンタリー(2013年)。

これまでにも、私が尊敬する女性のドキュメンタリーを色々観てきた。
著名な設計技師と画家の娘に生まれながら、敢えて農業の道に進んだ、私の大好きなターシャ・テューダーに近いものを感じさせるベニシア・スタンリー・スミス(通称ベニシア)さんが今回の主役。

大原ののどかで美しい自然は、一度実家の家族と訪れた時に満喫したことがある。
本当に静かで、余計なものが何もない所だ。

築100年の古民家に、少しずつ住み心地よくリフォームしながら家族と住まうベニシアさん。
ハーブや美しい花等の植物、野菜を育て、何とも言えない味わい深い庭づくりに日々精を出す姿は、やはりターシャと重なるものがある。

自然と暮らし、お料理、家具の手入れ、、映し出される四季折々の歳時記。
私の好きなジャンルであることは間違いない!

そのパートが楽しめたのは勿論なのだが、、
それ以上に私の心に深く突き刺さったのは、ベニシアさんの人生に於ける家族関係のパート。

結婚、2人の子どもを出産、離婚、シングルマザーの大変な日々、今のご主人(山岳写真家)と子連れで再婚、出産、そして、また家族の危機。。

海外で生活していくだけでも大変なのに、落ち着いたかと思われた頃に、何度もベニシアさんに降りかかる苦難。
でも、ベニシアさんは誰かを恨んだり、自棄になったりせずに、それをしっかりと受け止めて、諦めず、祈り、"困難は私達を試すためのメッセージ"と静かに語る。

"人生は色んなことが起こるけど、受け入れるしかない"
"許しとは過去を手放すこと"

耳に心地よい、ベニシアさんの美しい英語で語られる名言の数々。

経験に裏打ちされているからこそ、深みも重みもある。

今のご主人との関係は、私にはちょっと厳しいなと思わせられたけれど(ステップ・ファミリーの難しさもまざまざと知らされた)、
ベニシアさんの器の大きさと、偶然の巡り合わせの妙で、落ち着くところに落ち着いて行くのは、さながら"雨降って地固まる"なのかなぁ、、と。


"大切なのは、何が起きたかではなく、それにどう対処したのかである"という古いことわざが、今コロナ禍に苦しむ私達の心にもストン、と落ちるように感じた。

ベニシアさんから学ぶことが沢山あり、久々に実りある映画鑑賞となった。

"心の中に、発芽を待っている種が詰まっている"という彼女の言葉に、
私も自分の中に眠っている種を掘り起こしてみようかな、なんて思ったりした。


とても、素晴らしいドキュメンタリーだった♪
あーさん

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