クレミ

わたしはロランスのクレミのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.7
400本目です 始めたころはまさかこの数になるとは思わなかったです まだまだ足りないですね頑張ります。

魂と魂とが出会い、ぶつかり合い、理解し合い、溶け合ってしまうようなほど結びつく。人と人との関係って大なり小なり本質はそういうもので、そこには性別とか年齢とか関係ないはず。ましてや深く愛する者同士の間では。
それでも、人間には積み上げてきた価値観というものがあって、将来どう生きていきたいか、自分に嘘をつきたくないのか、それとも人並みの幸せに囲まれていたいのか、それぞれ違ったりする。その差違から少しずつズレが生じて、互いに温めてきたものが流れ出ていってしまう。誰よりも理解し合ってるはずなのに。

そんな関係性を、絶妙なキャラクター設定と彼らの性格や表情・仕草の作り込み、ポップで少しレトロな音楽に合わせて、苦味を感じさせつつカラフルに彩ってゆくドランの、若くも成熟したセンスと手腕にはいつも感嘆させられる。

LGBTの人もヘテロセクシャルの人も同じ人間なんだから、最後に残るのはそういうセクシャリティから来るものなど関係なく、人間として普遍的な苦しみなのかなあと彼の作品を見るとつくづく思います。

「明日でも、月曜でも火曜でもいつでもいいじゃない。30年も待ったんだから。」
フレッドが見せた、レストランの店員や客たちへの激しい怒り。あの怒りと苦しみと勇気と美しさ。あの時ロランスが感じたものを、誰もが感じるべきなんだろうなあとも思うし、感じたいし、感じてほしいのかもなあ。自然と湧き上がるあの感情を観客に与えるよう運んでゆけるのがすごい。あの感覚を、自分は一生忘れられないと思う。

こんな感じで大好きな映画ではあるのですけど、いかんせんめっちゃ長いので満点にはならないかなあというね。

ギンレイホール、LGBTオールナイト3本立ての1本目でした。
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