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わたしはロランスのiyuki08のレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
3.6
グザヴィェ・ドランの映画にはストーリーがないのかもしれないと感じた。全てが純然たるドラマ。「関係性に時間が引っ張られている。」
それが他の映画とは一線を画すところなのではないだろうか。そして、その形態は私にとっては膨大な情報過多となって、困惑させる。

私はもともとキャラクターの状況や相関関係を把握するのがすごく苦手なので話を見失うし、特にこの監督はレイアウトで説明しようという気もあんまりないから、より私にとっては難解に感じられるのだ。本当は、難しいこと全然言ってないんだけどね。
映画を見ているとヘビーな人付き合いさせられてる気分になってくるので、見ていて非常に精神力を削がれるのだ。ドランの映画は、劇中で展開される人間関係に観客をなんのフィルターも通さずにぶち込むという魔力を秘めている。

彼の撮り方というのはクールに見えて、実はそれは本人のナルシズムに基づくクールさでしかない。結局、象徴的なカットというのも登場人物の主観による感性のカットが多いのではないだろうか。状況を説明する気がさらさらない。一定水準以上の映像美を達成する実力は持っていながら、その実、ぜんぜんフォトジェニックではない。たとえばニコラス・ウィンディング・レフンなどとは画に対する意識がまったく違うのである。

被写体との距離感やレンズの選択、執拗なまでの登場人物の顔への肉薄、移動ショットやフォロー、などを見ていると、その瞬間へのスクリーンへの埋没に神経が注がれていると言っても過言ではあるまい。
(そういう意味ではトム・アット・ザ・ファームは見やすかった。登場人物も少ないし、まだ非現実感もちょっとあったし。)
そういう意味では、余計な人間関係を良くも悪くも楽しむ余裕がないと味わうことのできない贅沢な映画だと言えると思う。

本作の主題などは敢えて触れるまでもないが、私はもうちょっと客観的な立場から映画に参加したいなと感じた。なぜかTVアニメーション「ユリ熊嵐」を思い出したが、私はユリ熊の方が圧倒的に、好みである。
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