あけび

わたしはロランスのあけびのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.7

久しぶりにずっぷり自分の好みに刺さる映画でした。 複雑な心情をリアルに描きつつ幻想が現実とひと続きになっていたり…お洒落なだけでないところが良かった!
一度見ただけでは理解しきれないような余白も含めて、とても良い映画でした。

国語教員のロランスは30歳の誕生日、突然恋人フレッドにこう切り出した。
「私は女になる。」
ありのままの自分を受け入れてほしいロランス、今まで培ってきたもの、自分の求めていたものがなんだったのか愕然とするフレッド。
迷いながらも強く惹かれ合う2人の10年間を描いた、美しく激しく切ない物語。


2人の愛はとにかく大きくて、お互いを傷つけてしまうほどぶつかり合う。人に対してこんなにも感情をぶつけることができるだろうかと考えてしまいました。特に喫茶店でのシーンはボロボロにやられました…

当事者であるロランスもですが、
何より一緒にいるフレッドの心情に共感しました。どんなことがあってもロランスを愛し続ける彼女にグッときました。


印象的に残ったシーン。
ロランスが学校を辞めざるを得なくなり、最後に黒板に書き残した言葉「ecce homo」エッケホモ(この人を見よ)は
聖書の中で、キリストの受難を騒ぎ立てながら見物する群衆に対して、ピラトが放った言葉です。
ロランスにとって男性の身体を持って女性として生まれてきたことは受難であり、この言葉は世間に対して放った痛烈な批判、そしてロランスの決意のように思いました。


この時監督のドランは23歳と聞いてびっくり..
どんな人生を送ったらこんな映画を作れるのか...
他の作品も気になります!
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