けーはち

ウォッチメンのけーはちのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2009年製作の映画)
4.0
コミックのような“ヒーロー”が実在するパラレル・ワールド。米ソ冷戦に至るまで米国は世界の覇権を握るため彼らを利用してきた。やがて彼らの活動を制限する条例が制定され、僅かの公認ヒーローを除き大多数が引退に。そんな中、とある公認ヒーロー“コメディアン”が何者かに殺され、かつての仲間“ロールシャッハ”がその死の真相を探る。

★DCコミック最高傑作との声も名高い名作の実写化。ヒーローをリアル世界のアメリカ史においてシミュレーションしたらどうなるか、冷戦期の核戦争の危機と相俟って重くシビアに、そして絶妙なリアリティで描かれている。また、ザック・スナイダー監督の前作『300<スリーハンドレッド>』でも魅せた、アメコミ(グラフィック・ノベル)の映画再現は、最高潮に達している。

★魅力的な深淵さをたたえた世界観に加えて、ときどき挟まる真に迫るエログロシーンや、“誰がヒーローを殺したのか?”というミステリー仕立てのストーリー、それに合わせて、ヒーローたちのキャラクターも人間くさくて良い。暴力が好きだからヒーローになって、妊娠させた女を逆上させ正当防衛で殺す様な正真正銘のクズや、ボンボンの道楽でヒーローを始めたけど禁止されて引きこもってたり、親との関係がおかしかったり、正義感が強すぎて妥協できないため狂ったように行動したり、逆に人類社会の正義とかどうでも良くなっちゃって人との繋がりを恋人に感じるしかなくなったりとか、とにかく個人的かつ小市民的な悩みを抱えている。

★スッキリしない、仲間の絆が守られたり正義を貫く者が勝ったりもしない、虚偽と欺瞞で塗り固められた状態でかろうじて世界の平和が守られ、それすらも危うく相対化して物語は終わる。普通のアメコミ・ヒーローものを期待して「えっ、これいつ盛り上がるんだろう」と思って観てたら、いつしか終わってしまった……終わってみれば文句を言わずに、最後まで観ていた……そんな感じの作品。