11人の映画監督が11分9秒01の中で描く、それぞれの9.11。
ダニス・タノヴィッチが参加していることもあり、観たかった作品。
息子が中古で買ってきてくれたので鑑賞することができた。
この映画のテーマは、テロの悲惨さを伝えることではない。
アメリカ同時多発テロ事件という衝撃的な出来事を、世界の目で多角的に見ることである。
それは、名を連ねた監督の名前や、描かれた場所に表れている。
このメンバーで、テーマと長さ以外に全く制約を設けずに作られていることが、この映画の素晴らしさだ。
そして監督たちはその信頼に答え、それぞれにしか描けない9.11を描いている。
特に当事者であるアメリカを、ショーン・ペンがどのように描くかは気になったが、どの作品よりも「映画」的に描いていたことが、とても印象深かった。
どんな事件も、どんな悲劇も、すべては日常の中にある。
当たり前の日常が突然壊される。だからこそ悲劇なのだということを、改めて感じる。
あの日も、世界は日常の中にあった。
世界中が日常の中で喜びや悲しみを味わいながら、日常を奪われた国のことを思った。
しかし、既に日常を奪われている国もあった。悲劇が日常と化している国もあった。
そういうすべての9.11を映画として残すことは、本当に素晴らしいと思う。
あの日、テレビに映し出された映像は、圧倒的な恐怖だった。
私は自分が震えていることに気づき、それを落ち着かせるようにお腹をさすった。
あの時私のお腹にいた命が、16年経ってこの映画を手に取った。
ネットで検索すれば、あの日の映像は簡単に見ることが出来る。
でもそれだけでは見えてこない部分を、この映画は描いている。
この映画があってよかった。この映画を撮ってくれてありがとう、と思った。