Azuという名のブシェミ夫人

ムード・インディゴ うたかたの日々のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

3.5
財産で気ままに生きてきたコラン(ロマン・デュリス)は、ある日友人の紹介でクロエ(オドレイ・トトゥ)に出会い、二人は恋に落ちる。
幸せな日々を送るはずが、クロエは肺に睡蓮の花が咲いてしまうという奇病に侵されてしまう・・・

どこかで見たことのある設定だと思ったら、永瀬正敏主演の邦画『クロエ』と原作が一緒だったのか。
元々が奇抜なアイディアによって構成された物語なのもあるけど、ミシェル・ゴンドリーが彼らしく奇想天外にクレイジーな映像表現で、独特な世界観を演出してる。
登場する数々の不思議な道具、動き回る料理、具現化された光や音楽。
前半に表現される怒涛のメルヘンな狂いっぷりは、人が幸せにフワフワ舞いあがる様子や、興奮してアドレナリン大量噴出な感情のスピード感なんかを表現しているよう。
幸せの絶頂にある二人の恋のキラメキなんてものは、他人から見たらこんな風にクレイジーだったりするものね。

ミシェル・ゴンドリーの作品に慣れてないと悪酔いするものがあるかもしれない。
“ビニール袋に入るだけお菓子詰め放題のタイムサービス~”みたいなギュウギュウな世界観がしつこく感じても、その袋の底が破けちゃう空虚な後半の為にはそれが必要なのでしょう。

本当の絶望や悲しみは、幸せの後にこそやってくる。
光を、色彩を、心躍るような音楽を奪われていく。
あの美しくも輝いていた世界はどこへ行ったのか。
悲哀がすぐそこにあっての泡沫の夢だったなんて。
いや、だからこそ美しかったんだね。