前半と後半の落差。
ディテールが面白いカラー&モノクロの雰囲気映画です。
Googleカレンダーのような機能を持ったルービック・キューブや、パリを飛べる白鳥の足漕ぎボートなど、IoTという言葉を最初に聞いたときに思い浮かんだ世界がここにありました。
1980年代の文化に今と未来の技術が入っているようなディテールが面白いです。
前半はこんな感じで、ゆる〜いSFのフランス映画って雰囲気ですね。
シュールさが心地いい。
後半は自己修復したガラスの破片がクロエ(オドレイ・トトゥ)の肺に入ってしまい、肺に睡蓮が咲く病気に罹ってしまいます。
主人公にとっては、仕事もお金もなく、妻(クロエ)が病気で、精神的にもかなりハードだろうなと想像できます。
想像できるというのは、そう感じないということです。
前半のシュールコメディ的な要素を残したまま、辛い状況を映すので、後半はブラックユーモアを観るような見方をしてしまいます。
言わば自分と無関係な他人の不幸を笑わないと〈わかってない奴〉になる雰囲気です。
これは原作も本作も意図していないものだと考えているので、下手くそだなと感じます。
後半の暗い要素を慎重に扱わず、入れたい描写を盛り込んでしまった。
そのために、前半作り上げた独特ないい空気感が瓦解していて残念です。
原作はフランス語の言語的な文学を楽しむ作品だそうです。(つまり駄洒落。)
英語ならわかるけどフランス語だし、日本語訳では一箇所しか言葉遊びがわかるように訳されていません。
そもそも字幕版だと〈わからない〉作品になるのかもしれませんね。