寂々兵

殺人蝶を追う女の寂々兵のレビュー・感想・評価

殺人蝶を追う女(1978年製作の映画)
3.8
自殺願望のある大学生がピクニックで蝶を追いかけていたら見知らぬ女に毒入りジュースを飲まされて死にかけ、何度殺しても復活する押し売り老人は「意志が大事じゃ!」と喚いて灰になり、鍾乳洞で拾った骸骨はいきなり美女へと生まれ変わって「肝臓をよこせ」と迫ってくるもんだから自動生成の米菓子が舞う中でセックスする…というこの変な映画はキム・ギヨンの傑作で、現在の尺度で言えばカルトじみているのだが、ある意味では監督の直情さが随所に垣間見えている青春映画ともとれる。「1日にどれだけメシを食っても腹が減るから死にたい」と嘆くブコウスキーみたいな青年が終盤サンドイッチにがっついてるシーンなんてなぜか感動的なのだ。あと相変わらず階段の使い方が巧妙で、教授の娘が階上からヌッと現れる演出は『下女』のあのヤバいメイドを彷彿とさせる。とまあギヨン節炸裂なのだが、俺はどちらかと言えば『異魚島』の方が好きです。
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