週末に何をしていたか を題に生徒に文章を書かせた国語教師ジェルマンは、余りに酷い内容の数々に画廊で働く妻に思わず愚痴を言う。
しかしその中の一つ、目立たない生徒であったクロードの書いた同じクラスメイトの凡庸な少年の普通の家庭に、数学を教えてあげるという名目で入り込み家や家族を観察する内容の文章に才能を感じ、彼に個人的に文章の書き方や彼の書いた内容への指導を行う。
提出される毎に進んでいく他人の家族へ入り込み、盗み聞きをし、家を物色していく内容にジェルマンの妻は不快感を示すが、ジェルマン自身は彼への指導へ熱が入っていく。
って内容。
個人的にはジェルマンが最初に目を留めたクロードの友人宅の話に特に何の引っ掛かりも続きが気になる感もなかったから、ジェルマンがクロードの作文の続きを読みたいが為に数学のテストを盗んでコピーした辺りでもう いや…そんなんなるか?って気がして う~ん…ってなってた。
他の生徒が余りにも酷すぎた上に、自身が作家を夢見たけれど才能がない事にも気付いていて、だからこそ自分にないものを持つクロードに惹かれていったのかも知れないし、最終盤で話題に上がる通りジェルマンは否定していたけれど子供を持たなかった事でクロードに息子の姿を重ねていたのかも知れないし…。
他人の家は外国よりも遠い って言葉を聞いたことがあるけれど、本当にその通りだと思うしそれを覗き見る面白みみたいなのは分からなくもない。けどそれだけの代償を払うほどのものだったんだろうか…。
一方のクロードは、母がなく仕事で負傷し要介護の父を抱えた2人暮らし。
高校もすぐに辞めようと思っていたけれど、ジェルマンが自身に下した作文の高評価を見て続ける事に。
彼の持っていない"普通の家庭"を持っている友人の家の様子を知りたい気持ちや、自分を個人として認めてくれる教師の期待に応えるように、次第に相手を操るような言動に変わっていく。
最初は"典型的な中産階級の女"と形容した友人の母に試すように近付き、彼女の手に入れようとする様は彼の持っていない母、母性への強い渇望から来るのかなぁとも思ったのだけれど、あくまで彼視点で書いた創作であるし、全てジェルマンに読んで貰う為の作文だから実際のところは何も分からない。
最後には何を求めてジェルマンの妻に、ジェルマンが"妻が不妊症だ"と言っていたと嘘を吐いたのか。
そして妻と寝たかのような文章を書き残したのか。そして何故妻はクロードと寝たのか という問いにきちんと答えなかったのか。
そもそも、危うい性質を持った生徒だ と妻は認識していたのに何故家に上げたのか、何故少年の一方的な話を信じて家を出る事にしたのか、この辺がよく分からなかった。
クロードは求めた母性を伴う愛情を拒否され、唯一自分に関心を寄せる大人であるジェルマンにも一度否定された事でどう感じたんだろう。手に入らないのだったら壊してしまえば良い、と思ったのかな。
最初に友人の家庭に入り込んだ時からそんな事を考えていそうでもある、と思っていたけど…。
いい大人達が16歳の少年に翻弄されすぎではないだろうか…と、少年の年代の子供たちと一切接点のないわたしは思うのだけれど、"魔性"というモノを知らないからそう思うだけなんだろうか…。
ただ、クロード役を演じたエルンスト・ウンハウアーくんは もしかしたらそうかな…そうかも…って魅力があったのは間違いない。知的で怪しい、危うい魅力があった。
わたしにはあんまり刺さらなかったけれど、教師と生徒とか生活の一部の接点でしかないものが人生に波及する作品は面白いと思う。