みほみほ

フリークス(怪物團/神の子ら)のみほみほのレビュー・感想・評価

4.0
Amazon Primeの表記に ゛ホラー゛とあったので、物珍しそうな古いホラーなのかと思い、割と軽い気持ちで観てみた。

これはホラーではない。
ホラー というか…なんというか…ドキュメンタリーに近いものがある。

私は特に気分悪くなったりしなかったけど、感想を見ているとチラホラ元気な時に見た方がいいとの声があって少しびっくりした。

この作品を観ていて驚きだったのは、実際に演技されてる方自身が 本当に体に障害を持った人で、当時は生計を立てるのにこんな風に見世物芸人として働いていたという生々しい事実だった。

グレイテスト・ショーマンで見た煌びやかな世界を全否定したくなるほど、現実を見せられた。背景を調べて知った後にこの作品をまた思い出すと、どれだけ凄い映画だったのかを実感する事となる。

見ていて一番驚いたのは 上半身だけで 軽快に走り回れる方(ジョニー・エック)だった。この身体能力はどこから来てるんだろうと気になりながらも、彼には不思議な魅力があって、出てくる度に嬉しい気持ちになった。確実にあの中でムードメーカーな感じがしたし、人気もあった事と思う。

今では有り得ない、昔だから出来た発想が詰まったような現実的な映画で、呼称も虐げて蔑んでいるのが分かる呼び方を平気でしているし、馬鹿にする言葉、笑い声、表では愛想良く振る舞い 陰では笑って面白がる健常者の醜さったらなかった。

その中でも クレオパトラという女が典型的な嫌な女過ぎて、高笑いどころか下品過ぎる図太い笑い方にドン引きを超えて怒りまでも湧いてきたが、最後の最後で 自分が見下して馬鹿にしてきた存在の気持ちを実際に知る事となり…スカッとしたと同時に恐ろしさも感じた。

当初の試写会などで 残酷過ぎてカットされた幻の30分があるとされているが、そのシーンはどうやらクレオパトラを懲らしめる行動にあったようで、少し見てみたい気もしたが、映像としては無いようなので幻のエンディングになってしまったようだ。

悪女クレオパトラの行いが成敗される瞬間はそこら辺のスプラッタ映画よりもおぞましいのだろうけど、きっとカットされた背景には 見世物にされている身体障害者達がそれを行う事の衝撃さも含めてカットに至ったのだろうなと想像がついた。


冒頭で見世物小屋の人間を紹介するおじさんも言っていた事だが、、、

これはあなた方にも起こり得た事です
彼らも 望んでこうして生まれてきたわけじゃない

これが ぐっさり心に突き刺さりました。


自分とは違う奇形児を見た瞬間に、異質と受け止めて 面白がるのが愚かな人の常。

誰もが 自分の中に潜む 怪訝な目をして凝視しそうなそんな醜い気持ちと、ああ自分はそうならなくてよかったという優越感などを見透かされるような気がして、怖くもなった。

それでも 最後の最後にハッと気付かされる事実への怖さ。本当に誰の身にも起こり得る事だと……。

皆で結託して クレオパトラを懲らしめようとするシーンが凄く好きでした。(カットされた部分を聞いたら怖くなったけど)

白黒映画で退屈するかと思いきや、気付いたら口をぽかんと開けたまま見入ってました。

身体障害者が活躍するなら良いのだけど、見世物にするという文化が消えて良かった。(まだ根強い地域もあるかもしれないが…。)

普通とは何か…
本当の醜さとは…
人間の本質に気付かされたとても意味のある貴重な幻の作品でした。

🌚2019年85本目🌚
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