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母の身終いのcoroのネタバレレビュー・内容・結末

母の身終い(2012年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

いつもと変わらぬ朝。
いつもと違う母の顔。
残されたわずかな時間が、静かに流れていく… 。

刑務所から出所したばかりの男は、ひとり静かに暮らす母親の元へひとまず身を寄せる。そこから始まる母と息子の噛み合わない共同生活。
母親が不治の病にかかっていること。自らの意思で死を選び、それが法的に許されるスイスの施設で尊厳死を実行しようとしていること。そんなことを知った後でさえ、交わり合うことのないふたりの姿は見ていて痛々しい。しかし彼女はそんなことを意にも介さず、当たり前のように残りわずかな日々を慎ましやかにすごしていく。このままでいいのと思う意思に反して、ことは淡々と進んでいき、身仕終いは終わる。
決して幸せとは言えない人生を送ってきた彼女の静けさの中に潜む愛の姿が、余りにも切なすぎて心の在り処をつい見失ってしまう。
彼女はそれで解放されたのかも知れないが、その手を離すことなど到底無理なこと。
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