千利休

親密さの千利休のレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
5.0
前半部の無機質さに多少辟易していたのだが、終わってみれば人生ベスト級の評価を与えている。ナレーションを一切用いずに、ここまで"言葉"を大事にした映像作品がこれまでにあっただろうか。純粋に濱口竜介の脚本力に脱帽するのみである(そして彼がここまでファンタジスティックな人だとは思っていなかった)。これもロメールやカサヴェテス等、素晴らしいストーリーを作り上げる映画監督らをひたすらに研究した賜物なのだろうか。その事実だけで感極まりそうになる。人生とは映画のようなものであり、映画とは人生であるということの証明。それには4時間近い時間が必要なのであろう。ラストシーンは死ぬまで忘れないと思う。とはいえ、不満がなかったわけではない。前述のとおり前半部の無機質さ、というか自然や建築物の美しさを捉えるために用いられていない長回しはやはり苦痛になりうるものだし、そもそもショット自体は『ハッピーアワー』ほどの洗練され具合や面白さは感じないから多少の退屈もあった。それでも、やはり脚本の素晴らしさが群を抜いており、もはやそれだけでもいいとすら思わせる。目の前で起こっていることを映し出すだけで映画が出来上がる、これはある意味では映画の理想なのかもしれない。"演じる"研究の集大成。『ハッピーアワー』の前の段階で全ては完成していたようだ。

※『寝ても覚めても』欄で言ったように、震災をどう描くかは常々考えなければならない。本作のやり方は、このような方法もあるのだという好例。
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