まりぃくりすてぃ

親密さのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
1.9
独善的で力のある習作、または失敗作。私たち観客の理解と協力と扶養?をひたすら求めてくる、甘えんぼな映画。
画面の変な震えがない濱口監督の作品は、小揺るぎするとしてもパントマイムみたいにゆったりまっすぐ水平か上下にだけ“スタイリッシュに微動する”から、いつも大人っぽい。ガキ臭くなくて、老けてもいない。全雰囲気が。永遠の33(と⅓)歳みたいでそういうのは私に合う。(ちなみに、私がこの世で一番好きな音楽家ジョージ・ハリスンの最高傑作アルバムは、ジャストその年齢で録音された『33⅓』。)
でも例えば、よさげなヘアサロンだと最初は思ったのに、美容師の社交性の種類や技術センスにだんだん違和感抱きだして、最後は泣きたい気持ちで押し黙りたくなっちゃう、みたいな、、、、そして、まるで「映画」と「自分」だけを愛してて「人間」を愛してない人が創った作品に見える。ひょっとして濱口竜介監督はシューター(本気を出す強者)であるよりもフッカー(危険な裏ワザのひけらか師)にすぎないの?

ムダが多すぎるんだよ。快速・各停・新幹線の話と海で溺れた話以外、すべてつまんないってば。それと、東京の鉄道の話なら人身事故のたとえも加えてほしかった。
小手先の技々。だから魂にほとんど何も響かない。
その前半の最後、口笛でごまかした夜中の長回しで完全に作品が破綻。男女の無価値な会話、途中で聴く気を失わせた。くだんの快速云々の唯一魅力的なセリフを序盤ぶりに繰り返してるのを、苦々しくも多少好意的に聴きながら私はいつしか、宮沢賢治の銀河鉄道の夜のジョバンニの永遠の名セリフ「本当の幸いはいったい何だろう」だけを当然想ってた。あの童話は300年後にも必ず残るけど、この映画は確実に消滅するでしょう。(いや、その前に日本が100年以内に消えるかも。)

前半で崩壊してるから、後半のどこがどう盛り上がっても手後れ。てか、後半は後半で魅力乏しいしね。詩が低水準。そして声の出し方とか全然、舞台演劇になってないから根本的にダメ。演劇よりも映画が上位ジャンルって信じ込んじゃってる撮り方は、卑しいよ。映画なんてたかだか100年少々の歴史しかないのに。
演劇の観客をただのエキストラ(物体)としてしか扱わない演出はさらに悪い。演劇はもちろんライヴなんだから、ちゃんと彼ら一人一人を「今生きてる人」として描くべき。途中退席する人やイビキかく人や笑うとこじゃないのに笑っちゃう人とかを。
山崎パン工場の労働者を濱口監督は結局ナメてる。「大変」とか「みんな三日でやめてく」とか、言葉ばっかりだ。そんなにパンパンパンパン言うなら、パン工場の労働現場にまでカメラ向ければいいじゃん? きついきつい単純作業中に主役男が詩をぶつぶつぶつぶつぶつぶつ考え出してるところ撮ればいいじゃん?

暗い男、無意味に前半だけで消えた男、主役らしき演出女、猫背の女、歯並びの悪い女、元男の女、まあまあの男、地味だが感じ悪くない男、、、がいて、ワークショップ的なリアリティーは充分ある。そうやって私たちへの等身大感をプレゼントしてくれた中、地味だが感じ悪くないルームメイトの男が、「聞き捨てならない」と言って階段下りてきてからのシーンでなかなかイイ表情だった。これは褒め。

さて、朝鮮戦争が今から起こったら、日本への観光客なんか中国からも欧米からも来なくなり、原油は超値上げ、それがなくても株安とか円売りとかいろいろ来て「海の向こうで何かやってる」なんて呑気に構えるの絶対わが国はムリ。経済危機で日本なんか死ぬってば。設定が甘すぎるんだよ。
それに、東京在住者はこういうことに関心持たないわけなんだけど、実際に沖縄の嘉手納基地とかでは、米国がちょっとでも外国の戦争に首突っこんだだけでもう24時間ぶっ通しで離発着、夜間給油にエンジン空吹かしとかの大騒音で住民の生活すぐにメチャクチャになるんだよ。沖縄には真っ先に観光客激減が襲いかかって沖縄経済が死ぬしね。「自衛隊派兵の是非」とか「義勇兵」とか呑気な机上論バカバカしい。

トリュフォーの、戦争の真っ最中に恋愛演劇にばっかり熱中してた役者たちの『終電車』もふざけた駄作だったけど、この映画、結局、戦争と演劇がどうつながるの? かっこつけないでよ。
“こいつら”と監督、翌年2013年暮れの特定秘密保護法への反対デモ(政治なんてどうでもいいけど、とにかく言論の自由を守るための)にちゃんと参加したんだろうね??????


PASSION 99点以上
ハッピーアワー 92点
寝ても覚めても 89点
天国はまだ遠い 80点台
永遠に君を愛す 70点ぐらい
THE DEPTHS   50点台
不気味……   50点台
親密さ     30点台