次男

ばしゃ馬さんとビッグマウスの次男のレビュー・感想・評価

3.7
書いた・作ったものを否定される気持ちは、経験者にしかわからないと思う。心無い無責任な言葉になじられて、放り出されて、「それでも立つならご自由に」って。「表す」ってそれ自体がめっちゃ恥ずいし、こんなにも確信が持てない。しかも、しかも強制されることじゃないから、「好きでやってんでしょ?」いやほんとその通り、ぐうの音も出ねえっす。

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夢とか現実とかそういう臭え話に該当しない人は対象じゃないはずなのに、該当しない人でも伝わりそうなステレオタイプな切り口の前半は、「もっと容赦なく切り込んでおくれ〜〜」って思ってた。思ってたからけっこう退屈に感じてた。ばしゃ馬さんの馬車馬さとか、ビッグマウスくんのビッグマウスさとか、当事者じゃなくても書けそうな掘り下げで。

でも後半の端々は、明らかに当事者のそれだった。惨めさの度合いとか、惨めさを感じる時とか。しかもグロいのが、この映画のスタンスが終始身内で、優しいこと。良い話に仕上がってること。所詮夢とかそんなのの終わりはなんの広がりも持たないこじんまりした話で、小さな良い話になって、消化されて、いや、「良い話にして」、「消化して」、次に進む。しかない。ということの残酷さ。

後半、最後の応募作に向けて加速していく点描。きつかったなー。あんなの、一円にもならねえんだよね。でもすげえ楽しいんだよね。くー。

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などという主観入りまくりなので冷静に「映画として」どうだったかはなんとも言えない。面白くないかもしれない。てか、あんまり面白くないと思う。なにか目を引くような映画的な挑戦もなければ、度肝を抜くような展開もないもの。

じゃあもう、これはみんなのための映画じゃなくて、当事者のための映画だったってことでいいかなと思う。ラストでクソションベン垂れてる浮浪者なんか映しやがって。やっぱり夢なんか推奨しない。でもこの感慨は夢を抱いてしまった人の醍醐味。
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