【視点で感じる、宇宙空間】
まず、劇場で観たかった……。
いきなりですみません。だが、事実上、この作品の演出は完全に劇場向きであり、テレビの空間では伝わりにくい所がある。
しかしそれにしても、この映画に映る[宇宙]は美しすぎる。[エマニュエル・ルベツキ(「レヴェナント」「ツリー・オブ・ライフ」他の撮影監督)]と長年組んできた監督は、映像や[視点]に関するこだわりが強く、その利用場所を、壮大な宇宙に用いる事によって、観客の目にハッキリ映る[繊細な宇宙空間]を実現したのだ。
エマニュエルの特殊な視点の撮り方は、自然の雄大さや、草むらを歩く人間まで、美しく魅せてくれる。それを本作では、ほぼ固定と言ったらいいのか、シャトルの上から見渡すように、ゆっくり[回転]していくような撮り方をしている。
[ライアン博士]が宇宙ゴミに衝突した直後でも、重力に押されながら回転している彼女を、先ほどと、ほぼ同じ技法でしかも、先ほどよりも[速く]撮っていた。観ているこちらは、とてつもない[緊張感]に押される。
美しさから、[恐怖]に変わった瞬間だ。
見せ方の転換によって、人の[見方]を変える事が出来るのだ。
この作品は、それを改めて痛感させられた作品だった。
映画を作るにあたり、[視点]はとても重要になる。それを工夫することによって、見せ方は変わってくるし、[作品の質]にも影響してくる。キュアロン監督は、それを[ROMA]でも監督自身が活用し、撮影している。あの作品も、非常に見せ方が上手く、作品の質が高くなった一番の要素であると言える。
それを、監督とエマニュエルはデビュー当時から証明させたのかもしれない…。