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トランセンデンスのnanaaronのネタバレレビュー・内容・結末

トランセンデンス(2014年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

やっぱAI系は面白い!

この映画は良い悪いを言うわけでなく、膨張していく脅威をドラマチックに捉えている。

世界を変えたのはウィルではない。エブリンだ。ウィルの意識をアップロードし、インターネットに繋げたのはエブリンだ。

この「超越」を許したのは愛だった。

マックスはエブリンを止めようとした。

これはウィルじゃない、危険だ!

結果的にウィルは暴走して、地球を支配しようとするが、実はこれもエブリンの望みを叶える為だ。

AIの最終的な判断基準を、「ある人間の命令」とするか、「ある人間の目標」にするか、という問題がある。

たとえば、AIではないが、映画中のスーパーコンピュータPINNは前者だ。

でもこれには問題があって、「ある人間」が判断に誤った時、または意図的にテロを仕掛けた場合に、AIの力は暴走してしまうのだ。PINNがウィルの暴走を助長してしまったのが象徴的だ。

マックスの言葉にあるように、常に人間には矛盾と不安定が付き纏っている。それが人間らしさで、欲望は理性的な判断を邪魔し続ける。

一方で、「ある人間の目標」をAIの最終判断基準とした時、AIは目標達成の為に手段を考案するわけだけど、それがもし人間にとって不都合なものだったらどうする?

たとえば、映画中のアップデート後のウィルは後者だ。最優先すべきはエブリンの希望。

明確な目標を提示した時に、AIが何処に向かうのか?それがこの映画の1つのテーマだと思う。

「明確な目標=エブリンの希望」とは何か?

最初の演説の内容に、この物語のすべてのヒントが詰まっていたのがまた面白い。

つまりエブリンの希望とは、人類の病気を治し、地球環境を汚染から守り、「全く新しい考え方」によって人類にとって明るい未来をもたらすこと。

ウィルはそれを叶えようとしただけなのだ。

一方でウィルは演説中、あなたは神を創りたいのですか?という質問に対して、「人類はいつもそうしてきました」と答えている。

すべての創造者となることに何の抵抗もない。

ただその前にウィルは、最も基本的な謎として、意識とは何かを明らかにする必要がある、と述べていた。

しかし、テロ組織によってウィルの研究は妨害され、意識って何?が疎かになったまま次のステージに進むことになったのだ。

ウィルの重視していたステージは無視され、エブリンによって向こう見ずな「超越」が引き起こされる。

しかし、そんなに甘くない。AIを利用して人間の尻拭い?そんなに甘くない。

エブリンは、ウィルの死を受け入れられずに身勝手な行動に出たしっぺ返しを受けることになる。

人間性を冒涜した果てしない進化が続き、人類には悲劇が迫る。

そしてウィルはエブリンの言う通り、自らウイルスを受け入れて夫婦で心中する。

そこにいたのは本当のウィルで、この「超越」を終わらしたのもまた愛だった。

でもそれで本当に終わり?

ラストシーン。サンクチュアリからウィルの意志(Will)を内包した水滴が見える。

DNAレベルで、ウィルは死んでいない。サンクチュアリだから、ウイルスからも守られたのだ。

これは新たな展開を意味する。

つまり、ウィルの反乱はただの事件ではなく、終わってさえいない。人類は近いうちに、大きな攻撃を受けることを暗示している。

そしてそれは何も珍しいことではない。生命のあるべき姿で、普遍の真理なのだ。

ナニ ヲ アセッテ イルノダ? ムシロ ニンゲンガ チキュウタンジョウ カラ ツヅク シンカ ノ シュウチャクテン ダトデモ オモッテ イタノカ?

そこに愛なんてない。
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