垂直落下式サミング

劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
ラノベ原作アニメの劇場版。
主人公をちやほやする女性キャラなんて、どの作品でも“可愛さ”のカテゴリ分けも方向性もある程度定まってるんですから、ラブコメって女の子じゃなくて主人公が大事だと思うんですよ。アニメの女の子なんてどうせ可愛いんだし。
本作の主人公司波達也は、観客ですらも「さすがです、お兄様!」と言わざるを得ない程の強さ、優秀さ、イケメンさを発揮するとにかく落ち度のない人間だということが強調されていて、感情移入不可な異質な怪物として描かれているのが面白い。
とりあえずお兄様に任せておけば、危なげなく、滞りなく、すべてが順調に解決していく安心感を何の疑問も抱かずに楽しむことができるのは、他の作品にはない魅力のひとつだろう。
しかし、一長一短というべきか。ピンチだとか山場とかそういう映画的な盛り上げは一切なく物語が進行するため、この作品に普通のエンターテイメント作品なら描かれるべき見せ場らしい見せ場はまったくないと言っていい。
この主人公は敵と相対した時点で相手が何をしたって勝つしかないし、重大な問題が降ってわいたとしてもそれは万事良い方向へと解決に向かうしかないし、女の子と知り合ったなら少なからず好意を向けられるしかない。物語の性質上、コイツが困ったり慌てたり嫌われたりすることのほうが不自然なのだ。このことからも、お兄様はブロンソンやセガールと同じジャンルに属していることがわかる。観客をハラハラすらさせない鮮やかさ。さすがお兄様、なんともないぜ!
さぁ、貴方も退屈な日常の寄る辺なさを消し飛ばす「さすおに」の世界へ。