渡邉ホマレ

パトリオット・デイの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.0
この国に住んでいると「愛国者」という言葉がなんとも…な気持ちになってしまうものですが。
愛国者の日、最も歴史あるマラソン大会を襲ったテロ事件と、その解決までを描いた「Wバーグ」の早くも最新作。

P・バーグ監督の得意技というか、事件に巻き込まれる善良な人々の生活がしっかり描かれるんですね。だが観ているこちらは、事件が起きることを知っているわけで…発生が近づくにつれ、彼らがその現場に集うさまを見せられるにつれ、「知っているのに」ハラハラしてしまう。「え?ウソでしょ…ホントにこの人たちが巻き込まれるの?」と。

そして発生の瞬間、カウントダウンなどなく、呆気なくボン!と発生する「事件」。次の瞬間目の当たりにする惨状...。
『ローン・サバイバー』以来、P・バーグ監督の得意技(その2)とも言える「痛み」の描写が炸裂し、現場の混乱の中に放り込まれた様な錯覚を覚えます。ドキュメンタリーの様な臨場感。
「爆弾の爆発とは、本当はこういうものなのだ…」という恐怖。
混沌と化す現場をようやく沈めた後、私を最も遣る瀬無い気持ちにさせたのは、「ある遺体」を護り、ただその横で佇む警官の表情でした。

さて、息つく間もなく捜査は開始され、本当にまるで映画の様な出来事が次々に発生します。
ネタバレせずに感想のみ書くと
「え⁉︎こんなヤツが⁉︎」
「え⁉︎ホントに撃つの⁉︎」
「え⁉︎署長⁉︎」
「え⁉︎勇気ありすぎ!」
「え⁉︎本気でそんな計画が⁉︎」
こんな感じ。

そして驚いたのが、今や実話映画の名手となった監督が、実話の中に恐るべきユーモアさえ盛り込んできたところ。
ある突入シーンでは不謹慎ながら爆笑してしまいました。すごいなあ。

「愛国者の日」をタイトルにしてはいますが、ボストンの人々は寧ろ「愛街者」なのだなと強く感じましたね。悲劇を経験した人々が、後に強く前進するという話は出来過ぎのようでありながら、何しろ実話なのだから納得せざるを得ない。すごいなあと感じると共に、ローン・ウルフ的なテロを防ぐ手段というのは本当に、非常に難しいということ。防ぐには長い時間と隣人との信頼関係を築いて行くことでしかないのだということを学んだような気がします。

うーん…「Wバーグ映画」、侮りがたし!