140字プロレス鶴見辰吾ジラ

パトリオット・デイの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
3.8
”悪魔と愛とアレルギー”

ボストンマラソンにおけるテロ事件をベースにした史実映画。監督は「バーニングオーシャン」「ローンサバイバー」のピーター・バーグ。そして主演はマーク・ウォールバーグという信頼できる2人がコンビを組む。

テロ事件のその時までの日常の切り取りと止めることのできない過去の時計の進みを暖かい愛を育むべき存在たちに乗せ、そして運命の時に到達し、粉塵と破片の散乱する悪夢の中に砕けていく現実が描写が胸に突き刺さっていく。打ち捨てられた子供の遺体に、千切れた足、切断を余儀なくされた愛の欠片たち。

しかしこの悪夢を見せられた後に灯る愛国精神というなのアレルギー反応のような各個人が齎す爆発的な熱量が事件解決に向けて、その時計の針を動かしていく。市井の人々が直面した危機の中で決してヒーローとは言えない立ち回りながら総動員して日常に侵入してきた悪夢を叩き出そうとする様は、愛国心という名のアレルギー反応で、追い込まれていく犯人の虚構性のない人間味が大きなうねりに飲まれていく感覚が淡々としているからこそ恐ろしくも感じた。住宅街の銃撃戦と爆弾の飛び交うミクロ的に描いた戦場はリアルに怖かった。愛の名の下に悪魔を排除しようとするアレルギー反応的な愛国心がクライマックスで美談として感涙にたるエモーションに演出される情緒不安定さ帯びて、そして狙われる国としての強さを思い知らされた。我々の母国日本が度重なる震災にて団結して復興していくが如く、自然を受容する強さと別ベクトルの侵入者への集団反応にて平和を手に入れる強さというものを。

老兵的な立場のJ.K.シモンズ演じる警官がタバコを燻らさ瞬時に車を展開するキレのあるシーンはピーター・バーグの「バトルシップ」で魅せた老兵のマッチョイズム的な格好よさがあった。