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パトリオット・デイのdm10foreverのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.0
【連鎖】

9.11以降、私たちは「見えない恐怖」というものを間近に感じながら生きてきた。平和ボケしていると揶揄されている日本人ですら、「テロ」の標的になっているという言葉に怯え、今まで「他人事」と思っていた海の向こうの話がいつの間にか自分たちも当事者になっていたのだいうことをまざまざと思い知らされてきたのだ。

2013年4月15日、ボストンマラソンで起きた爆破テロ事件はまさに平和の祭典を狙った卑劣な凶行。断じて許すことは出来ないし、それを「神の名の下」という事自体が神を侮辱しているという事に気が付いていない狂信的な人間がいることが悔しいし歯がゆい。

物語はまさに事件の直前から始まり、時系列を追って展開されていく。
犯人たちも同時進行で動く。そこにはストーリーを盛り上げるような推理要素やスリリングなハプニングはない。淡々と時計の針が進んで行くのだ。
何も知らない市民たちが「あの場所」に立つ。もし時間を遡れるなら「逃げろ!」と大声で叫びたくもなる。映画だとはわかっていても胸が苦しくなる展開。

そして事件発生・・・・。

本当に沢山の人が犠牲になった。8歳の子供が亡くなってしまったのに両親が病院に搬送されてしまい、引き取り手のないまま道路上に寝かされているシーンは本当に辛かった。
「この子の傍にいろ!」と命令された警官が、周囲から人が居なくなってもただ一人その子の横に立って目を真っ赤にしながら守っていた。勿論これは映画。だけど、当時あの現場では同じような場面が、ひょっとしたらもっと凄惨な場面があったんだと思う。

犠牲者とは決して亡くなったり怪我を負った人達だけではない。あの場にいて身内が巻き込まれた人、昼夜を問わず命懸けで事件の捜査に当たった警察、FBI、そして地球上の人達が何気なく謳歌していた自由や平和を問答無用に奪われた瞬間でもあるのだ。

宗教的な思想の対立は結構。それぞれの考え方はあるのだろう。
しかし、それはあくまでも思想であって何かしらの強制力を持って押し付けられるものではない。信じるものが居るから「宗教」なのだ。自分の信じる神の為に他者を殺してよいなんていう神が居るわけがない。

歯がゆい・・・本当に歯がゆい。

他人の思想を変えさせることは難しい、ひょっとしたら不可能かもしれない。
でも、だからといってそれを力で押し付けたとしても意味がないし、結局相手の思想はかわらないまま。だけど、暴力は終わらない。

だったら、せめて「宗教」を前面に出すのはやめて欲しい。別に何かの宗教を信じているとかではなく、思想を理由に争いを始めると終わりがないから。

人間という愚かな生き物から「戦争」を奪うという事は無理なんだろう。例え神でも。

だったら戦いたいものだけで戦えばいい。戦う理由のある者だけで戦えばいい。
無理やり第三者を巻き込むのだけは本当にやめて欲しい。

この映画が実話であるという事も相まって、見ている間はずっと苦しかった。
だけど目を背けてはいけないとも思った。

「お、J・K・シモンズ大活躍じゃん!」とか「マーク・ウォールバーグはやっぱり安定感あるわ~」とか、いつもの調子でレヴューを書こうと思っていましたが、書き出すと色んな思いが噴出してきて・・・。ちょっぴり重いレヴューになっちゃいました。