オルキリア元ちきーた

パトリオット・デイのオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
3.0
ボストンマラソンの無差別テロ事件を扱った「ダブルバーグ」の映画。

マーク・ウォールバーグ扮する警官は警官としてやるべきこととそれ以上の働きをして事件解決のために動くドキュメンタリー風ドラマ仕立て。

ダブルバーグの映画は「バーニングオーシャン」も観たけど、こちらもかなり「事件の経緯」にこだわった作り。
事実を元にしてるからどうしてもこういった構成になってしまうんだろうけど、ケヴィン・ベーコンやJ・Kシモンズやジョン・グッドマンといった錚々たる演技派のキャスティングが、果たして本当に必要だったかどうか?
と思うくらい、せっかく揃えた名優の演技が捉えられてないのは、もはやピーター・バーグの映画の特徴と思えてしまう。

むしろこの作品の見どころはそこではなく、あまり知られていない「テロリスト側」の描写がかなり克明に描かれていたこと。

特にテロ犯が捕まり、実行犯の妻が尋問されるシーンでの、イスラム教徒の女性捜査官とのやりとり。

捜査官も自分が信じる神であり、犯人達もその信じる神の教義に従って行動しているという確固たる信念に基づく犯行のため、犯人の妻を落とせなかった場面。

ここが、ピーター・バーグは実は一番見せたかったのではないか?

「イスラム教の洗脳が怖い」という意見が出ていたが、果たしてそんな単純なことだろうか?
元はといえば、ブッシュ政権時代からのアメリカの中近東への圧力が原因の、イスラム圏のアメリカ嫌いが端を発した溝の深さがある。

そしてこの「無差別爆弾テロ」という卑劣な犯罪行為のやり方をイスラム圏の人達に教えたのは、元は私達と同じ日本人の過激派テロリストである、という事実を忘れてはいけない。

日本でも、エリート頭脳を持つ人間が地下鉄にサリンを撒くテロを起こしている。それはイスラム教でもキリスト教でもない、たまたま狂った教祖気取りの人間の狂った復讐心だっただけで、犯罪内容は変わらない。

宗教が人間を洗脳しているわけではない。
犯罪行為やテロ行為を正当化するために、悪意を持った人間が、宗教を利用しているだけで、宗教が悪いわけではない。

だから、イスラム教徒だろうが、キリスト教徒だろうが、その他の宗教だろうが、そこは問題ではないのは、人種も国も性別も関係ないのと同じだ。

犯罪やテロは、映画の中やテレビの中や海の向こうの国の話ではなく、いつ自分達が、加害者または被害者になり得る現実である、ということを考えていたい。