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タイニー・ファニチャーのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

タイニー・ファニチャー(2010年製作の映画)
4.0
ダメな女がグダグダするモラトリアムな話が好きなんですが、本作もやはり!
2010年の作品で、監督のレナ・ダナムが主演もしてるんですね。
それで母親と妹役はダナム監督の実の母親と妹だし、友達役も実際の友達、主人公のオーラが大学卒業後に就職できずに戻ってきた実家は実際の実家、という事で、リアルに身近なもので自伝的映画を超低予算で作ったという事のようです。

オーラは大学卒業の時に恋人とも別れるし職にもありつけずニューヨークの実家に戻ってくるところから始まるんですが、アメリカって日本と違って高校卒業したら実家を離れて自立するのが当たり前だし、法的にも18歳で成人ですから、オーラみたいにのこのこと実家に戻って来るなんて、ほんとに恥ずかしい事なんだと思います。

さらに、お母さんは芸術家として成功してるし、妹も優秀だし、自分だけやる事もなくてダラダラしてて、それはそれは惨めだし家にいても居場所なんかないわけで、なんとか仕事を始めるも、カフェの受付嬢だしで、これはなかなかツライですよね。

知り合ったばかりのよくわからんユーチューバーを何日も家に泊めたり、職場のカフェで話し相手になるシェフも非常に胡散臭いし、でもそんな男とも流れでヤッちゃうし、何してんねん、ワタシ⁇ の連続ですよ。
ほんと情けなくなる。

けど、わかる。
わかるよ、オーラ!
オーラは私だ、間違いなく私もオーラだった。
私の中のオーラ。
身につまされる、ほんとに。

甘ったれて、だらしがなくて、頑張りきれもせず、成り行き任せで、現実逃避して。
周りのみんなはちゃんとしてるのに、自分だけ何者にもなれずに、どうしていいかもわからず。
あゝ、なんてリアルなんでしょうか。

いや、自分の名誉のために言うと、オーラ程ではないです。
卒業後すぐに働いたし家庭も持ちました。
それなりにマジメに生きてます。
けど、けど、やはりオーラは私自身にもいるんですよね。

もうとにかく生身の女の生態が明け透けに描かれてるんですよ。
たいていの映画の女は美化され、或いは男のファンタジーですよ。
しかし、オーラは、オーラこそがリアルな女であります!

だらしのない身体ひとつとってもそうですよ。
ぷよぷよの腹や太もももそのままさらけ出し、パンツ姿で家の中をウロつき、床でドベッと寝そべって、都合が悪くなると言い訳したり人のせいにした挙句に拗ねたりするんですよ。
そういうもんなんですって!

これワタシの事デスカ?と思ってしまうくらい生々しく、イタイとこつかれて恥ずかしくなる感じを味わいつつ、特に成長するわけでも改心するわけでもなく、一歩踏み出すような事もないけど、みっともなくジタバタして足掻いてるオーラが愛おしいし、やっぱりお母さんて好きだし、こういう時期が人生にあっても良いと思えました。

こういうテーマや描き方がグレタ・ガーウィグによく似てて、このレナ・ダナム監督もそうですが、モラトリアムを経てこうして映画監督として才能を発揮して活躍するのが結局すごいです。
彼女らのような若い女性の監督にこれからも期待大です!

77
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