ベビーパウダー山崎

アルプスのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
3.5
死体を蘇らせてまぐわう禁忌と同列に心の喪失を偽の感情(肉体)で埋めようとする行為そのものが倫理に反していて、それでも続けるとなると当然、頭はおかしくなる。不在の母と見え隠れしている近親相姦的な父との関係性、テニスプレイヤーだった死んだ娘と自分も多少やってました程度のテニスから強引に結びつけて娘の役柄を演じる中年女性、鬱屈していた人生の逃げ場所を見つけたというより、逃避は逃避だとしても、まともな顔して子供として受け入れられたい、甘えていたい(父に愛されたい)と入れ込む幼児退行の気持ち悪さが滲み出ている。
死者を演じるバカバカしさも突き詰めると気が狂う、コメディ(喜劇)とシリアス(狂気)の紙一重のところで勝負しているのはランティモス映画の特徴。真っ白な新体操用こん棒を手に持ち、「これが赤色に変わったらお前追放な」と言い聞かしてからぶん殴る暴力はベタだが最高。普通の人が普通の人を痛めつける、唐突な暴力はやっぱり良い、結局「映画」は暴力とセックス。冒頭とラストの新体操はハッタリ、ランティモスがよくヤる手口。