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ハンナ・アーレントのMaoryu002のレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
3.0
哲学者ハンナ・アーレントはドイツに生まれ、ナチスから逃れアメリカに亡命していた。1960年、元ナチスのアイヒマンの裁判を記事にして発表したところ、ナチス擁護やユダヤ人侮辱と捉えられ非難されてしまう。

映画としての面白さはともかく、その思想と歴史的事実は非常に興味深かった。

ナチスとユダヤについては、誰しもが絶対悪とその被害者と認識しているが、事実はもっと複雑で、当事者である個々の人間はそんな単純ではない。
ただ、この問題はあまりにもデリケート過ぎて、そんな意見すら批判の対象になってしまうという様子が描かれている。

冷静に見れば、ユダヤ人全体を擁護するなんて、それこそ全体主義に向かいそうな声であり、ハンナの「私は一つの民族を愛したことはない。愛するのは友人。」という言葉が心に残った。

それにしても、あれだけの批判に立ち向かうハンナの勇気には敬服する。
彼女のラスト5分間の講義は、とても分かりやすく腹落ちした。

映画は最高の娯楽である一方で、新しい世界を見せ、気付きを与えてくれるものだということを実感させられる一本だ。
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