Tラモーン

新しき世界のTラモーンのレビュー・感想・評価

新しき世界(2013年製作の映画)
4.3
うおお…!
哀愁で胸焼けがする…。
評価高いだけあってめちゃくちゃ面白い。「インファナル・アフェア」×「ゴッド・ファーザー」って感じかな…。いやー、まさに韓国ノワール。

韓国最大のマフィア・ゴールドムーンに8年間にも渡る潜入捜査を続けるジャソン。
彼の正体を知ってるのはコ局長と、囲碁の先生を演じて連絡係を務めるシヌ、直属の上司であるカン課長、と警察の中でも3人だけ。

っていうあらすじを読んで「韓国版インファナル・アフェアか?」と思ってたらちょっと違ったな。


ゴールドムーンの会長が事故により急逝。突然勃発した権力争いにジャソンが巻き込まれて行くという展開で、「インファナル〜」のように警察側にはマフィアの潜入者はいない。だからジャソンの心情とか身の置き方とか、その辺りがメインに描かれる。

冒頭、権力争いに飛び込むよう指示を出されてカン課長とシヌにブチギレる描写からジャソンがもう限界だということがよくわかる。早く真っ当な警察官に戻りたいのに、まだマフィアを続けなきゃならない…。もうすぐ子どもが産まれるのに。

あー、無理無理。子どもが生まれたら1分だって残業してたくないのに。マフィアの潜入なんか続けてられないよ。


その権力争いの中の、ジャソンのボスである次期会長候補のチョン・チョンがこの映画のキモだったなぁ。

結果的に警察組織とチョン兄貴への情の間で揺れることになるわけだし。

ファン・ジョンミンの明るくてコミカルな演技と突然見せるマフィアの表情の使い分けが見事。
おチャラも、対立候補や警察との駆け引きも、裏切り者に容赦しない顔も凄い。
「ユア・マイ・サンシャイン」の人か!って途中で気がついたけど、オールバックにするとやっぱり貴乃花親方に似てるなぁ…。


ジャソンが警察だとバレるバレないのスリルとマフィア組織内の目まぐるしく展開する権力争いが面白くて2時間越えなのに全く飽きない。

ときどきバイオレンスなのもやり過ぎず、きちんと山場になるし、痛々しさよりも哀しさが全面に出た演出になってるのが良かった。

ドラム缶のとこ切ねぇよお…。

全体的に演出が哀愁寄りなのはやっぱりアジア映画の巧さだなと思うんだけど、特に痺れたのは、病院でジャソンのアップからサーッとカメラが引くとこ。あんなに孤独を表現するカメラワーク初めて観たかも。

あとはラスト間際で家を出るジャソンを奥さんが見送るところ。この後の展開を考えれば、すでにジャソンの気持ちは固まっていたわけで、あそこは完全に「ゴッド・ファーザー」1作目のラストと同じだよね。
でも奥さんの表情を見ると、まだ救いはあるのかな。

血生臭いラストのピタゴラ展開ですら、哀しさに溢れていて、内容ほど痛々しく感じないから面白いな。
自分の身と家族を守るためにジャソンのした選択は、チョン兄貴のためでもあったんだろうか。

遡ること6年前の若かりしチョン兄貴とジャソンで映画が締まるのもグッとくる。


韓国映画を観てると兄貴とか先輩、お兄さん、お姉さん、兄弟みたいなフレーズがめちゃくちゃ出てくるけど、やっぱり血縁関係以外の上下関係とか情みたいなものが深い国民性なのかな。
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