ギズモバイル

新しき世界のギズモバイルのネタバレレビュー・内容・結末

新しき世界(2013年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

≪ざっくり評価≫
潜入捜査官がゴッドファーザーする話。プロットがかなり優秀。
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総合評価 (/7) ☆ 3.7
シナリオ 5
総合演出 4
独創性 4
完成度 4
心理効果 3
相性(*2) 3
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【ネタバレ】
ヤクザ企業グループに楔を打ち込むべく、後継者争いに便乗して課長ポリスが知略を巡らせる。その名は「新世界プロジェクト」。長年の潜入捜査により上層部まで上り詰めた潜入捜査官(主人公)を駒として動かしつつ、犠牲を出しながらも策略で邪魔な2人の後継ヤクザを排除し、冴えない傀儡後継ヤクザを立てるのに成功し、潜入捜査官が美味しいとこ持っていって大成功!となる予定が、既にメンタルズタボロの潜入捜査官が逆ギレして邪魔なヤクザや上司の課長とかその上司を丸ごと粛正して絶対君主となりハッピーエンド(主人公に関しては)。

≪突っ込んだ感想≫
ノワール描写が控え目で韓国映画としては上品な部類。シナリオの完成度も高く、課長の計略に感動。見た目はむさ苦しいオッサンなんだけど、知力は孫臏とか真田昌幸レベル。その手のひらで踊らさせるヤクザ達に巻き込まれて観客も騙される。

まあ、ぶっちゃけ邪魔な2人を同士討ちさせて息のかかったヤクザを後押しするだけのシンプルな内容なんだけど、シナリオ展開が上手いので、何割り増しかで高度な策略に感じてしまう。映画としての見せ方が上手い!

ただ、ラストの2人の回想シーンは違うと思う。本作ではそもそも潜入捜査から始まる出会いなので、兄貴との関係には昔から根本的に亀裂が入っている。片方が知らないだけで。なので元から壊れているものが最終的にぶっ壊れただけなのでカタルシスが無い。例えば、兄貴とあの仲の悪い島田紳助似の凶悪ヤクザとの青春(があれば)なんかを描いた方が、お互いの立場の違いから意図せず警察の謀略にハマり殺し合う羽目になった事が強調され、しかもその屍の上に主人公が君臨する構図が実感できるので個人的には心理効果が高いと思う。


≪蛇足≫
社会において自らの栄達の為には善悪は無いのだ。寧ろ栄達の邪魔になるものは聖人も悪となり、恩恵があるならヤクザすらも善。すなわち警察とってヤクザの存在は根本的に善属性となる避けがたい本質が良く表現されている。しかし潜入捜査ほどハイリスクローリターンな仕事も少ないな。

それと名前が紛らわしい…なんぼバリエーションが少ないといっても、主要人物にわざわざ同じイって苗字?を付ける必要性がわからない。フィクションなのに。