トンボのメガネ

トランス・ワールドのトンボのメガネのネタバレレビュー・内容・結末

トランス・ワールド(2011年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

作品の構想は凄くいい。
サスペンスが解けて、ストーリーが転回し始めた時にワクワクする意外性があった。
しかし、ネタバレしてからの微妙なズレ?と言うかテンポの悪さが気になった。

ドイツ人の父親が空襲を生き残れば、子育ての時に母親がそばにいてくれて全てが上手く行く…という設定はかなり雑で乗れなかった。
大事なラストスパートで、ゴールが見えた瞬間息切れしてしまった感が否めない。

低予算なだけに役者の演技力が非常に重要であったはずが、メインの女性以外の役者の未熟さが見ていて歯痒かった。
もしくは、コンセプトにあった配役選びがもう少し出来ていれば、また印象が変わったかもしれない。

最も近代に生まれているはずの彼が一番古風な顔立ちをしているのも違和感があった。往年のハリウッドスターの面影たっぷりの俳優を起用しているのだから当然とも言えるが、下手に著名人の息子を使うもんじゃない。

そして、 冒頭との対比で現れた、新しく生まれ変わったであろう彼女の姿に期待を寄せて見ていると、そこには完全に服に着せられた状態の全く変化のない彼女が登場するのだった。
そして、どう見ても姉妹にしか見えない違和感たっぷりの二人の親子が、ゆっくりと海へと向かう姿を長尺見せられると共に、じっくりと白けていくのだった。

欲を言えば、不幸な生い立ちを背負った2人が消えてしまった寂しさを感じさせる余韻をラストシーンに込めることが出来たならもっと良かった。
と言うより、蛇足なラストシーンに意味を持たせるには必要な要素だったように思えた。

それをするには、消えた2人への愛着がもっと湧くような演出が本編中に必要になる…ハードルは高くなるが、その方が脚本作りとして遣り甲斐がありそうだ。

役者選びと脚本や演出を妥協せずにもう少し練っていれば、かなり跳ねたかもしれないに… 設定が面白いだけに、このまま埋もれるのは非常に残念だ。
いつか、ポン・ジュノのようなマニアックな監督が設定だけ拾い上げるかもしれないが、出来れば正式にリメイク版を作ってあげて欲しい気もする。