こたつむり

トランス・ワールドのこたつむりのレビュー・感想・評価

トランス・ワールド(2011年製作の映画)
3.8
★ ネタバレ厳禁、丁寧に作り込まれた物語

「寒々しい森の中。
彼女が辿り着いたのは古い小屋だった。
中には壊れた無線とベッド、無造作に転がるバックパック。空腹に負けた彼女は荷物を漁り、幾ばくかの食糧を口にする。小屋の外から聴こえてくる足音。住人が戻ってきたのだろうか…?」

これはなかなかの掘り出し物でした。
ジャンルとしてはスリラーになるのでしょうか。ある限定空間で、真相を探りながら脱出を試みる物語なのです。

だから、鑑賞前に情報を仕入れなかったのは正解でした。やはり、スリラーは観客自身が“暗中模索”であることが肝要。着地点を予測しながら少しずつ歩んでいく…そんな緊張感を楽しむジャンルなのです。

しかも、本作は伏線の張り方が真正直。
もうね。見え見えなのです。喩えるならば、樹の陰から尻尾が見えているのに「まーだだよ」なんて言うヒヨコ。「あ。これは○○だな」と簡単に推測ができるのです。

しかし、本作で重要なのはその先。
真相の先に見える“仄かな温かさ”。
それこそが製作者が見せたい部分なのです。だから、真相が見えても肩が下げるのは早いですよ(勿論、着地点まで予測したうえで肩を下げるならば…仕方がない話ですが)。

また、低予算の製作…ということで、映像効果の安っぽさには目を覆いたくなりますが、あくまでも脚本の妙を楽しむ作品。そこは割り切るべきでしょう。

それは配役も同様ですね。
著名な役者を揃えなくても面白い作品は作れるのです(とは言え、キャサリン・ウォーターストーンは活躍の場を広げていますし、クリント・イーストウッドのご子息であるスコット・イーストウッドも出演していますが)。

まあ、そんなわけで。
切れ味の鋭さと仄かな温もりを併せて描いた稀有な物語。興味がありましたら、ハードルを下げて臨むと「お。これは掘り出し物」的な感覚で楽しめると思います。

最後に余談として。
原題は『Enter Nowhere』…“どこにも行けない”ということで、物語の内容を考えれば納得できるのですが、邦題は『トランス・ワールド』。なぜ、この名前にしたのか…未だに分かりません。配給会社はこれで集客できると思ったのでしょうか…?