2MO

テレーズの罪/テレーズ・デスケルウの2MOのレビュー・感想・評価

4.1
小鳥のさえずり、松林を揺らす風、自転車、鈴の音。手漕ぎボートに伝わるせせらぎ。駆ける少女の足音、笑い声。羊の鳴き声、轟く銃声、ヤマバトの死。

静謐な環境音の重層を前奏にして、クロード・ミレールの遺作は、愛のない結婚を“演じる”女の裏腹にある多層的な、無自覚な、混沌の情緒を浮かび上がらせる。
異常な正気に毒される正常な狂気を。
タバコを片手に、遠くを見つめ、口をつぐんだまま不実に微笑むオドレイ・トトゥの背徳への眼差しを借りて。

“忘我の境地、恍惚、激情”
それが不徳と禁じられる鳥かごで、所有物とされる女の欲望は“平穏よりも悲劇”へと向かう。
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