まずはこの名作をmubiで見れたことに感謝したい。
三人の青年を中心に描いたこの作品、長回しやドキュメンタリー的手法を巧みに用いて頗る瑞々しく見応えのある映画となっており、さながらカラトーゾフ作品のように卓越した演出の宝庫と化した三時間弱の芸術家はまるで飽きとは無縁のものだった。
特に主な三人だけでなく通りの人々も溌剌と映っている屋外のシーンが素晴らしく、ネオレアリズモやヌーヴェルヴァーグの手法をロシア映画で昇華させた例としてもかなり貴重だったように思う。
しかも屋外にしても屋内にしても逆に静寂に包まれたシーンも後半多くなるのだけど、そのどれもが侘しさを感じさせるもので、静においても動においても尋常じゃない魅力を放つ様子にはつくづく凄まじい映画だと思い知らされた。
この作品を監督したマルレン・フツイエフにしてもチェコのフランチシェク・ブラーチルにしても、世界には傑作を作りながらもあまり世に知られていない名匠が数多く存在するが、そんな隠れた名匠を発見できたときの喜びは計り知れない。
ちなみにこの作品、なんとあのタルコフスキーが終盤小さい役で出演しているが、後年作られたアンドレイ・ルブリョフから見られる彼の長回しのルーツももしかしたらここにあるのかもしれない。